自由が丘駅前のいじめられ高校生事件(5)
特に、剣道部員たちの動揺が収まらない。
何しろスクリーンに映り、悪事を繰り返しているのは、紛れもない自分たちなのだから。
しかも、そんなことを言ってくるスーツ姿の若い男は、あちこちの恐ろしい場所に、その動画を送ってしまったと言う。
「もう・・・おしまいだ・・・剣道部は謹慎?活動停止?」
「いや、退学?暴行と恐喝で逮捕?」
「親に怒られる・・・やばいよ」
「女からも見下され・・・」
田中主将は、床にペタンと座り込み、ただガタガタと震えるのみになってしまった。
すると先生が、剣道部員たちを叱りつける。
「誰が撮ったか知らないが!」
「全部お前らの責任だ!この馬鹿野郎ども!」
「ああ、俺は知らない、知らない、関係ない」
「その証拠に動画に俺は映っていない」
神威大和は、その先生に声をかけた。
「そこの先生、本当に知らないのか?」
「まあ、それはともかく、それでは、これは何?」
神威の言葉と同時に、スクリーンの動画が変わった。
どこかの妖しいキャバレーのソファに、「先生」ともう一人の中年男性、そしてホステスが座っている。
剣道部員たちが驚いた顔。
「え?今日の相手校の監督?」
「先生はベロンベロンに酔って・・・ホステスに抱き着いて」
「それを相手校の監督が写真に撮って・・・」
神威大和の顔に厳格が帯びた。
「剣道部員だけが酷いわけではない」
「そこの先生とやらは、キャバレーに誘われ酔わされ、ホステス抱きつき写真を撮られ脅されていた、そんな相手に試合で勝つことはできない」
「だから、鈴木君の足首負傷を知っていながら見逃した、その強さを万が一にも発揮させては自分が困るから」
「そして、剣道部員が鈴木君を苛めても知らんぷり、武道者として、教育者としての自覚があるのか」
先生は、その顔を青くして、床に座り込んでしまった。




