自由が丘駅前のいじめられ高校生事件(4)
剣道場の一面の壁全体の大きなスクリーンを見ていた高校生たちに、動揺が走った。
「おい!マジ?俺たちじゃねえか!」
「誰が録画した?アホか!」
先生らしき男の表情も変わる。
「俺は知らん!こんなの」
「だから俺の責任ではない!」
神威大和は、その剣道部員と先生の動揺に更に追い打ちをかける。
「ああ、君たち、この動画は官邸、警視庁、都教育委員会、都知事」
「それからライバル校の剣道部とマスコミにも送ったよ、覚悟して」
ますます震えあがる剣道部員と先生を無視するかのように、スクリーンに映る動画が変わる。
少し足を引きずりながらも、いじめられていた鈴木が、他の部員を小手や胴、面を決める場面が続き、その後、負けた剣道部員たちが剣道場から出て、悔しそうに密談をしている。
「気に入らねえ、しばき上げます?田中主将」
「ああ、数人掛かりで、金属バットでもいいぞ、ただ人目は避けろよ、万が一ある」
「心配いりません、屋上を締め切りにして、監視もつけます」
「マジで気に入らない、田中主将に遠慮もない、突きをくらわすとは」
「身分知らずには、きつい仕置きだ、やれ!」
神威大和は、「田中主将」に声をかけた。
「理事長の甥だったら何でもできるのか?」
「自分が負けた腹いせに、部員への理不尽な暴行も構わないと?」
「そもそも、負けたのは剣道の実力差であって、鈴木君に非があるとでも?」
「剣道はお前のメンツと暴行のためにあるのか?」
「田中主将」がぐうの音も出ず、震えはじめると、スクリーンに映る動画が、夕方の校舎屋上に変わった。
「やっちまえ!」
「あ!顔はやめとけ!バレやすい」
「足にしろ!」
5,6人の剣道部員が金属バットを持ち、鈴木をめった打ちにしている。
そして田中主将は、屋上のフェンスにもたれかかり、暴行の様子をゲラゲラと大笑いしながら見つめている。




