自由が丘駅前のいじめられ高校生事件(2)
神威大和は、ゆっくりと歩いて、周囲からいじめられていた高校生の前に立った。
そして、ネームプレートを見ながら声をかける。
「鈴木君でいい?足首を軽く捻挫しているね、痛そうだ」
その高校生鈴木は、目を丸くする。
「あなたは・・・誰?ここは・・・どこ?」
また、いじめていた連中や、その先生らしき男も、神威大和の顔を首を傾げながら見る。
しかし、神威大和は、その質問や視線には反応しない。
足首を痛めた鈴木の足元に座り、スッと手をかざす。
「これで治る、すぐに、まともに歩ける」
神威大和の言う通り、本当に「すぐ」だった。
足首を痛めていた鈴木の表情が変わった。
「え?痛みがない、軽い、どうして?」
本当に軽いのか、ピョンピョンとジャンプをしたりする。
神威大和は、鈴木の状態を確認、声をかけた。
「鈴木君、もう大丈夫だよ、とにかく完治した」
「それから、一旦、この高校生たちから離れて、あそこに」
「うん、見えるだろう、着物を着た4人の男と洋服の外人、3人の女性のいる所に歩いて」
「歩けるかどうかも確認したいので」
鈴木は、「はぁ・・・わかりました」と、首を傾げた。
しかし、「治った確認のため、ただ歩くだけかな」と思うので、そのまま神威大和が指示した方向に歩き出す。
さて、ようやく神威大和は、鈴木をいじめていた高校生たちと、教師らしき男に向き直った。
そして、鈴木の時とは異なる、実に厳しい顔と声。
「君たちも、この展開は信じられないだろうが」
「私は、とても見逃すことはできない」
「君たちの、ねじ曲がった心と、鈴木君に対する仕打ち」
「見て見ぬふりをする、そこの教師」
「他にも、酷いことは多々あるが、全て厳格に明らかにして、罰を下す」
思いもよらない展開と、神威大和の厳しい顔と声に押されていた高校生と教師らしき男の表情が変わった。
「何だと?何だ?お前!そもそも一体、ここはどこだ!お前は誰だ!」
「警察を呼ぶぞ!とんでもない暴言だ!何を証拠に!」
しかし、神威大和は、全く動じない。
ますます表情を厳しくして、文句を言う連中を見据えている。




