神威大和は天界に (完)
しばらく天空を見つめていた神威大和は、ゆっくりと向き直り、首相と官房長官に答えた。
「これで一旦、天界へ報告に戻ります」
聖母マリア、イエス、マグダラのマリア、根津二郎、安倍晴明たちが頷く中で、血相が変わったのが森田愛奈と杉田玲奈。
森田愛奈
「天界・・・って・・・」
杉田玲奈
「何でもありで・・・信じられないことばかりだったけれど・・・本当にマジだったの?」
首相が再び尋ねた。
「次に人間界に来られるのは?」
神威大和は、意味深な返事。
「すぐに来るのか、あるいは何年先か、何百年先か・・・」
「至高の存在との相談の上になる」
途端に、森田愛奈と杉田玲奈は、ソファにペタンと座り込む。
森田愛奈
「神威君とお別れ?・・・永遠の?」
「これから生きる気力がない」
杉田玲奈
「ついて行きたい・・・無理かな」
森田愛奈
「せっかくの自由が丘の相談事務所が・・・」
杉田玲奈
「弁天様の歌と踊りのレッスンも終わり?」
すると、神威大和は、落ち込む二人を手招き。
二人は、恐る恐る、神威大和の前に立った。
神威大和はやわらかな笑顔。
「心配はいらない、君たちも一緒に天界に連れて行く」
「そこで、少し暮らしてもらう」
意味不明と、首を傾げる二人に、神威大和は続けた。
「いろんなキャラクターに逢えるよ、期待していい」
「それと、天界の時間と人間界の時間は、進行が異なる」
「少なくとも天界の時間は、直線的ではない」
「天界で何百年暮らしても、人間界の時間経過は皆無もある」
「また。その逆もある」
森田愛奈は、頭が混乱。
「と・・・言いますと?」
神威大和は笑顔。
「さっき言った何百年は天界の時間」
「だから行ったとしても、人間界の時間は進んでいない」
「言って戻って来ても、君たちが困ることは無い」
「むしろ、いろんなお方に逢える、素晴らしい経験になるだろう」
「今まで協力してくれた、ささやかなお礼だよ」
杉田玲奈が、神威大和に深く頭を下げた。
「それなら行きます、神威様を信じます」
そのまま、森田愛奈の手を握る。
「もたついている森田さんも連れて行きます」
森田愛奈が「もたついているとは何?」と言い返そうとした時だった。
窓の外に、白い大きな飛行船が停まった。
森田愛奈は、途端に元気を取り戻す。
「私、あの飛行船に乗ります!」
「あの飛行船大好き」
杉田玲奈も負けてはいない。
「私も一度乗りたいと思っていました」
「さあ、行きましょう!」
次の瞬間だった。
目もくらむような眩しい光に包まれたと思ったら、全員が大きな飛行船に乗っている。
神威大和は笑顔。
「一旦、報告して、天界を散歩、すぐに戻るかな」
「また、違うキャラクターからも、人間界に出たいと、声がかかっていてね」
森田愛奈と杉田玲奈は、顔を見合わせて、満面の笑顔でハイタッチ。
その様子が可愛らしいのか、飛行船の中は、大きな笑いに包まれている。
(完)




