神威大和の断罪(2)
安倍晴明が、静かに檻の前に立った。
その珍しい直衣姿に、檻の中にいる面々が反応を見せる。
「おい!侍の次は、陰陽師か?」
「笑わせる!」
「太秦か?アホらしい」
「何でもいい!さっさと出せ、人権侵害だ!」
安倍晴明は騒ぎ立てる面々に、冷ややかな声。
「お前たちの言う人権がようわからん」
「お前たちの言う人権は、自分の人権やろ?」
「いや、自分の人権言うよりは、お前たちだけの私益や」
「そのためには、他者の不幸など、お構いなしや」
「それが、本当の人権か?」
「違うのと違うやろか?」
根津二郎も、檻の前に立った。
「ここにな、お前たちのパソコンとやらに入っていた計画書を刷った紙があるぜ」
「結局、市民革命と言いながら」
「他人の財産の窃盗と、殺害、火付けじゃねえか」
「それも、全て晴明さんの言う通り、お前たちの私益のためだ」
「そのどこに、正義がある?」
「言ってみろ!」
安倍晴明と根津二郎に厳しい言葉を浴びせられ、檻の中の面々は、なかなか反論ができない。
しきりに、「市民革命のため」とか、「革命の大義のための微々たる犠牲に過ぎない」と、つぶやく声が聞こえたけれど、それも次第におさまった。
その時点で、神威大和が、口を開いた。
「檻の中の者たち」
「その目を閉じよ」
実に重々しく、抵抗を許さない力がある。
檻の中の面々は、抗うこともなく、目を閉じた、いや閉じさせられた。
神威大和は、再び重々しい声。
「これから見せるものに、どう応える?」
途端に、檻の中の面々の閉じた瞳に、何か恐ろし気な情景が映ったようだ。
全員の身体が、一気に硬直している。




