組織内部の混乱が始まった。
「獲得した現金と宝石類、つまりすぐに資金化できるもの以外は、全てを処分の対象となる」
別の幹部は、満面の笑顔で、言い放つ。
意味をわかりかねる市民団体組織の面々に、補足説明。
「くだらないカビが生えたような書画、骨董、仏像は全て焼却」
「例えば、三十三間堂の仏とやらのガラクタもだ」
「全て人民から、むさぼった苦しみの象徴でしかないからだ」
動揺した市民団体組織の一人から、質問が出た。
「京の街には、それを修復して商売しとる人もおられますが?」
「職を失う、と違います?」
質問は、また別の人から出た。
「京都は、観光産業も多くて」
「みな、焼却すると、路頭に迷うのでは?」
「日本各地から、いや、最近は世界各地から、お客さんが見えはって、それで暮らしを立てとります」
「全部が全部焼却すれば、誰も来んようになるし・・・収入もガタ減りや」
その質問の途中だった。
幹部連中の顔に朱が入った。
「この!馬鹿野郎ども!」
「市民革命の大義を理解しとらんのか!」
「何度言うたらわかるんや!」
「旧来の利権とそれにつながる人とモノは、全て焼却の方針や!」
「それで、市民の手による、新しい京都を作るんや!」
しかし、叱られたはずの、組織の面々は、納得しかねる雰囲気。
「ほな、その市民の手による、新しい京都って、具体的には何ですか?」
「飯のタネがないのに、どうして食べて行くんです?」
「それから、獲得した現金や、宝石の売却の分配とか、納得できるもんが、できとります?」
「それがなかったら、うちらは、骨折り損のくたびれ儲けです」
「いくら市民革命の大義言うても、それがはっきりせんと」
「組織のリーダーさんたち、それを言わんと」
思いがけない反発を受け、組織幹部の顔に、更なる怒りがはっきりと見て取れる。




