名古屋駅周辺の不穏(1)
森田愛奈がタブレットをタップすると、名古屋駅周辺の状況が映った。
「市民活動家のデモ?数百人規模?いや千人くらい?」
「プラカードに・・・天皇制反対?」
「日米安保破棄?自衛隊解体と戦争法反対」
「従軍慰安婦に謝罪せよ」
「徴用工判決に従え」
「いつもの主張かな、彼らの」
タブレット画面を見ていた森田愛奈の表情が変わった。
「え?彼ら・・・武器を持っている?」
「角棒?火炎瓶?」
「かつての日本赤軍?」
タブレット画面に、また別の団体が映った。
「右翼の街宣車だ・・・」
「5台?いや・・・もっといる・・・10台?」
「何か危険だなあ、機動隊でも呼ばないと」
森田愛奈が青い顔になっていると、公安庁の幹部から連絡が入った。
「両団体も、警察の許可を得ていません」
「違法なことをわかっていてのデモになります」
「公安も張り付いています」
「しかし、人数が足りません」
「右翼の街宣車も、相当な武器弾薬を積んでいます」
森田愛奈が、ますます青い顔になった時だった。
車窓から見えていた景色が一変した。
どう見ても、東名高速道路ではない。
青い空と白い雲があるばかりになった。
杉田玲奈が大声を出した。
「え?この車?空に浮いている?飛行機なの?」
神威大和は、笑った。
「いや、天使の羽がついている、と思って欲しい」
森田愛奈が窓の外を見ると、確かに真っ白で大きな羽が車から生え、動いている。




