自由が丘の豪邸宿舎(2)屋敷の中は、異世界
「ここは・・・家?」
森田愛奈は、屋敷の中に入った途端、開いた口がふさがらない。
「えーっと・・・童話とか映画で見た・・・緑の野原が・・・」
杉田玲奈は、キョロキョロと見回すけれど、それ以外の表現がない。
エルフがようやく説明する。
「このお屋敷は、あなたたち人間が言う、異世界に通じています」
「と言うよりは、あの玄関を閉じた時点で、すでに異世界」
神威大和は笑顔。
「そう、それが果てしなく広がっている」
緑の野原のほぼ全面に、色とりどりの花が満開。
野原の道そのものが、花園の中の道になっている。
また、少し先には桜の大木が何本も立ち並び、まるで天国のような美しさ。
エルフ
「そこに池があります、水も沸いています」
「お飲みになっても、かまいません」
森田愛奈と杉田玲奈と目を交わして、早速、池の水を手ですくって飲んでみる。
森田愛奈は、また驚く。
「冷たくて・・甘くて・・・それでいてさっぱりとして、美味しい」
杉田玲奈は、ゴクゴクと何度も手ですくっては飲む。
「普通の水じゃない・・・身体の中も、スッとして飲み飽きない」
神威大和が、天使のような笑顔。
「うん、これは天界の水」
「ルルドの水よりも、磨かれている」
森田愛奈が驚いて「天界の水?ルルドの水?」と聞き返すと、神威大和は杉田玲奈を手招き。
「杉田玲奈さん、あそこに君を待っている女性がいる」
「ゆっくりとでいいから、その女性の元に」
杉田玲奈は、その女性を見る。
確かに、純白の長衣を着た、黒髪の美しい女性が手を振っている。
杉田玲奈は、その女性に向かって歩き出す。
「あの女の人のところに?」
神威大和は頷く。
「人間界では、聖母マリア様と言われている」
森田愛奈は、また気が遠くなるような衝撃を受けている。