神威大和VS聖職者の欺瞞(16)
イエスは顔だけではない、全身が輝き始めた。
その着ていた服も、純白の長衣に変わった。
「また、いつでも、皆さんに逢いに来ます」
「驕り高ぶらず、人にやさしさを、あなたの心に平安を」
その言葉を言い終えた瞬間、イエスの身体が光に包まれたまま、宙に浮いた。
そして、そのまま大聖堂の天井近くの壁面、イエスを描いた姿の中に、消えてしまった。
熱心にイエスの話を聴いていた人は、本当に腰が抜けたような、呆気に取られている。
「奇跡か・・・」
「まさか・・・本物のイエス様?」
「いや、手品ではない」
「おっしゃられた言葉は、至極当たり前のこと」
「それを忘れていることが多いけれど」
「でも、ずっと聴いていたい、お言葉だった」
そんな騒ぎを横目に、神威大和の一行は、ワンボックスカーに乗り込んだ。
もちろん、イエスもそれに含まれている。
神威大和はイエスをねぎらう。
「イエス君、久々の説法、お疲れ様」
イエスは笑顔。
「いろいろと、解決してよかった」
そして目を細める。
「それにしても、日本人は穏やかな人が多い」
「エルサレムでは、議論して言い負かすことが、ステイタスだったけれど」
神威大和
「あまり議論は好きでない国民性」
「おおよその、感覚で動く」
「そうでありながら、比較的冷静、デモも少ない」
「治安も安定している」
「それでも、中には、よからぬ輩もいるけれど」
イエスが神威大和に尋ねた。
「次の場所は?」
神威大和は即答。
「京都、相当酷い危険を感じる」
そして、その顔は、本当に厳しくなっている。




