神威大和VS聖職者の欺瞞(15)
伴奏ヨハン・セバスティアン・バッハ、独唱杉田玲奈による「アヴェマリア」は、大聖堂全体に響き渡る。
そして、いつの間にか、入って来た数え切れないほどの多く人々は、皆手を組み、一心に聴き惚れている。
森田愛奈も、うっとり。
「玲奈ちゃん、さすが、歌上手いなあ」
「弁天様のレッスンも厳しかったけれど」
「泣いている人が多い、あれは癒されているのかな」
聖母マリアも満足そうな顔。
「これは浄化の調べ」
「心の中をきれいに整えます」
「アヴェマリア」が終わり、イエスが説教台に立った。
集まって来た「聴衆」に語り掛ける。
「どれだけ地上の富や名誉を積んだとして、神の国には、何の意味もありません」
「大切なことは、心の平安」
「人にやさしくすること」
「それを、お互いに考えて生きること」
イエスの顔が輝きだした。
「十字架にかけられた時、私は自分を嘲る人、指差して嗤う、多くの人を見ました」
「それから裏切った弟子たちも」
「それでも私を信じる人たちも見ました」
「そして天におられる神を思いました」
「今からそちらへ向かいますと、神に祈りました」
「それから、十字架から人々を見て・・・」
「私は、何をされても、この人々が、どんな人でも恋しくてならなかった」
「そして、許しました」
「恨みの心を持ったままでは、天には昇れません」
神威大和が、これこそ、究極の許し、とつぶやいている。




