神威大和VS聖職者の欺瞞(14)
神威大和は、杉田玲奈に「何か」を告げた。
すると、杉田玲奈の身体全体が震えた。
「え・・・本当ですか?」
「そんなこと・・・恐れ多くて」
「私なんか、とてもとても」
その杉田玲奈の背中を、聖母マリアがやさしくなでる。
「せっかくの弁天様のレッスン、その成果を発揮しなさい」
「大丈夫、毎日聞いていたから」
「最初の頃は不安だったけれど、本当に成長した」
「それだから、彼も天界から降りて来るの」
イエスも、杉田玲奈に声をかける。
「一緒に歌おう、人も集まって来る」
イエスの言葉通り、大聖堂の扉が開き、たくさんの人が入って来る。
神威大和が、笑顔。
「聖母マリアとイエスに捧げるコンサート、として街を歩く人に、根津君が声をかけた」
「そうしたら、どんどん、集まって来る」
「帰りには、聖母マリアのクッキー付きにするよ」
杉田玲奈が驚いていると、パイプオルガンの前に、いつの間にか中年の男が座っている。
そして、そのまま平均律クラヴィア曲集の第一番を弾き始める。
杉田玲奈は、ここに来てためらっている場合ではない。
聖母マリアにポンと背中をたたかれ、「グノーのアヴェマリア」を歌い始める。
森田愛奈
「素晴らしい、きれいなソプラノ」
「全てを浄化するような」
しかし、オルガンを弾く中年の男が気になった。
「神威君、天界から降りて来た彼は?」
神威大和は、クスッと笑う。
「ヨハン・セバスティアン・バッハ本人」
森田愛奈は、腰が抜けそうなくらいに驚いている。




