神威大和VS聖職者の欺瞞(12)
聖職者と打ち合わせをしていた工事業者を、神威大和が呼び止めた。
「ゴルゴダの砂って本当かい?」
聖職者にも聞こえるような、大聖堂内に響く大きな声。
工事業者は、「根津」のネームプレートを付けている。
そして神威大和の顔を見て、プッと吹く。
「いや、そこらへんの工事現場の砂です」
「砂を拾いに、イスラエルなんて行きません」
すると聖職者の顔色が変わった。
「おい!何だ!お前ら!」
「誰の許可を得て、大聖堂に入って来た!」
「それから、根津も部外者に勝手なことを言うな!」
その聖職者の前に、イエスが立った。
「ここは、神の家」
「神に祈りを捧げる家」
「誰が入っていい、悪いはないだろう」
「お前の言葉を、神が認めると思うのか?」
聖職者は、イエスの言葉に押された。
そして、足がガクガクと震え、身体全体が硬直するような感じ。
「いや・・・あの・・・」
「それはそれで・・・信者のために・・・」
「教会の発展のために・・・」
イエスの目が厳しく光った。
「それで、そこらへんの砂をゴルゴダの砂と偽り、献金箱に金を集めるのか?」
「偽りの金ではないか?」
「その金の使途は、お前の教会内での出世の資金か?」
「その行為のどこに、迷い苦しむ人を救うものがあるのか?」
聖職者はイエスの言葉に、全く反論できない。
何故、足が震えるのか、身体が硬直するのかもわからない。
とにかく目の前に立ち、自分の言葉を投げかける男に、気が遠くなるような、恐ろしいほどの威圧を感じている。




