神威大和VS聖職者の欺瞞(8)
イエスは、震える杉田玲奈の手を握る。
「驚いたかな?」
杉田玲奈は、突然感極まったのか、泣き出す。
「私なんか・・・もったいない・・・恐れ多くて」
マグダラのマリヤも、杉田玲奈の手を握る。
「いい娘さんね、素直で」
「いろいろ苦しいこともあったかな」
「もう、大丈夫、心配いらないよ」
イエスの目も言葉もやさしい。
「私たちを信じて」
「恐れることはない、神はあなたと一緒にいるから」
神威大和が、語りだす。
「神の平安、仏の世界、いろいろ言い方はあるけれど」
「要するに、その人の心が落ち着いて、前を向いている時には、神の平安、仏の世界」
「お金があって名誉や権力があっても、心が落ち着くとは限らない」
「そんなものは、変動するのだから、それを失う不安ばかりで、ますます落ち着かない」
「他人には攻撃的になり、あるいは攻撃を受けることが多くなる」
イエスも続く。
「人はパンだけ、つまり利益のためだけに生きていても、心の平安は得られない」
「心が落ち着いていてこそ、幸せな暮らしができる」
杉田玲奈が、少し落ち着きを見せると、会議室のドアが空いた。
根津二郎(鼠小僧次郎吉)が戻って来た。
「おや、お揃いで」と会議室を見渡した後、
「ほぼ、調べは、つきました」
「まあ、とんでもねえ奴らで、気に入らねえ」
と、かなり憤慨している様子。
神威大和の顔が、厳しくなっている。




