神威大和VS聖職者の欺瞞(7)イエスとマグダラのマリアが登場
ソファに座った「イエス」は、全く普通の紺のジャケットスーツ、その下に白いボタンダウンシャツ。髪は茶褐色で目は黒。肌はほとんど日本人と変わらず、美男。
「マグダラのマリヤ」は、桜色のワンピース、髪と目は、「イエス」と同じ、茶褐色の黒。
何より、可愛らしい感じ。
「イエス」が、まだ震えている森田愛菜と杉田玲奈に、笑いかけた。
「もしかして、十字架にかけられた時の、血まみれで出てくるかと?」
「マグダラのマリヤ」も、笑う。
「いつまでも、着ていられません」
「せっかく、21世紀の日本に来るのですから」
聖母マリアは、やさしい顔。
「仕方ないですね、そういうイメージが二千年も」
様子を見ていた神威大和が口を開いた。
「例えば、聖骸布を崇め奉る人々がいる」
「その真偽を懸命に調べて、論争になっている」
「しかし、イエスが語ったことと、何の関係があるのか」
「イエスは、自分を包んだ布を崇め奉れ、とは言っていない」
「あなたの隣人を愛せよ、それは言っているけれど」
「心に幸福を、心の中に神の国をと、教えたはず」
「それを忘れて、血まみれの服を崇め奉るとか、真偽を巡って争うなど、滑稽でしかない」
神威大和の言葉に、一つ一つうなずいていた「イエス」が口を開いた。
「数百年前、ドイツのイエス教会に行ったことがある」
「そうしたら、ユダヤ人排斥とか、撲滅の話をしていたのさ」
「私も、ユダヤ人なのに」
「悲しかった、イエス教会なのに、私が入る余地がないのだから」
森田愛菜が、動揺を懸命に抑えて、口を開いた。
「この自由が丘のお屋敷では、何があっても不思議ではなくて・・・」
「でも、本当にまさかで・・・」
杉田玲奈は、まだ言葉が出ない、身体が硬直している。




