神威大和VS聖職者の欺瞞(2)
大聖堂の聖母マリア像の前に、数人の聖職者が立った。
「ろうそくの熱で溶けるか?」
「それで、マリア像の目尻の塗料が溶けて流れます、いつもの通りポタポタと」
「偽物と見破られることは?」
「囲いを作ります、聖遺物には近づけないように」
「ついでに献金箱も置いておけ」
「それは当然です、司祭様」
「しかし、上手に作るなあ、新品なのに古めかしい」
「専門の業者がいます、あちこちで作りますので、手慣れています」
「万が一の口封じは?」
「問題はありません、もともと、唖の職人を使いました」
「日本人でもないので、日本語も書けません」
「教会雑誌と一般マスコミには?」
「まず、奇跡を作り上げます、それも数例」
「既に相当数の人選は済んでいます、役者を雇いました」
「具体的な奇跡は?」
「腰が曲がり、歩くことも困難な老女が、聖母マリア像を拝んだ直後に、スタスタと歩き出すが、2件」
「ほぼ失明状態の老人が、新聞の細かな文字を全て読めるが、3件」
「それ以外は医者にも協力させ、末期がんが消滅するのが2件」
「他にも作りますか?」
「いや、当面はそれでいい、奇跡の安売りはしない」
「まずは金と注目を集めたい」
「司祭様はそれで渡り歩いて、出世なされて来た」
「いずれは枢機卿に?」
司祭様と呼ばれた男は否定しない、満足そうな顔をしている。




