表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/147

『どうして』19


  **


 友成くんへ。


 赤ちゃん、無事産まれました。


 2783gの元気な男の子です。母子共に健康。(コレちょっと言ってみたかったよくあるやつ!)


 ちっちゃくてふにゃふにゃしてて、でも声はすごく大きいの。


 お父さんは、「新生児室の中で一番いい声を出す」「将来は演歌歌手かってくらいのこぶし」とすでに孫バカ全開です。泣いてるだけなのにね。


 名前は、優音ゆうとにしました。


 本当は友成くんの名前を使いたかったんだけど……(優成とかカッコイイよね)

ごめん。


 でも、ちょっと無理やりだけど気持ちはこめたんだ。


 成をせいって読んで、せい


 声から連想して音 


 優音ゆうと


 誰にも分からないよ! 知ってるのは私と友成くんだけ! 私すごくない!?


 「おとくん」て呼んでるんだ。


 大きな声でたくさん泣くから、私も泣きそうになる時いっぱいあります。


 でも、おとくんは友成くんを探してるのかな……って考えると、なんか……いっぱい泣いていいよ、とも思ったり。


 友成くん、今どこにいますか?


 まだ私達を覚えてくれてますか?


 ずっと待ってるよ。


 おとくんと私は、友成くんのこと信じてる。


 おとくんの声が友成くんに届きますように。



  優海より (愛をこめて!←これもやってみたかったやつ)



 **



 **


 友成くんへ。


 久しぶりの手紙です。久しぶり過ぎて怒られるの覚悟で書いてます。さすがに半年以上はヤバいよね……(汗)


 育児日記は毎日ちゃんと続けてるよ。


 それを読めば、おとくんの事は何でも分かるから! (と言い訳……。でも本当に大変だったんですっ)


 友成くんは、どんな調子ですか?


 頑張り続けて体調崩したりしてない?


 ……私は、通信制の高校に通うことに決めました。中卒でもいっか……と一度は思ったけど、赤ちゃんがいるし大変だからっていうのは理由にならないもんね。


 周りからそう見られるのも、ちょっぴり悔しいし。


 あと、勉強したいな~って気持ちが大きいかな。おとくんを立派に育てるには、やっぱり色々必要だと思うんだ。


 ――日記を見れば分かるんだけど、おとくんは同じ月に産まれた子達より発達? が遅いみたい。個人差で問題は無いと先生は言うし、保健婦さんも「おとくんは、のんびり屋さんなんだよね」と言ってくれるから大丈夫なんだろうけど……。


 時々、すごく不安になったりしちゃう。


 集団検診で他の子はコロコロ寝返りするのに、おとくんはぐーんって体ひねるだけなんだもん。でもすっごい惜しいんだよ。


 指でちょんって触ったらコロッて寝返りそうなのに。なんだろ。もしかしたら、こっちの方がすごいのかな。絶妙なバランス感覚持ってるのかな?


 寝返りもハイハイもしないのに、もうすぐ一歳になっちゃう!?


 とか言ってるのは私だけで、お母さん達は全然気にしてない。先輩はさすがだな……と思う。


 そうだ。友成くん、最近空見てる?


 散歩に行くとね、おとくんはずっと空を見てるんだ。


 あ~! とか、時々急に叫ぶからビックリする(笑)


 空に向かって友成くんを呼んでるのかなぁ。



 友成くん、今どこにいますか?


 まだ私達を覚えてくれてますか?


 ずっと待ってるよ。


 おとくんと私は、友成くんのこと信じてる。


 おとくんの声が友成くんに届きますように。


  優海より



 **


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ