◆◇◆ルルルの正体①◆◇◆
ホークさんによると、ルルルは道の分岐点に来ると僕たちが通った道の方に杖を置いて行ったのだと言う。
杖で道に線を引くことは、子供だったら当たり前にするし、何とでも言い逃れが出来る。
ところが道の分岐点が来るたびに、杖を置いて行く行為が1回か2回くらいならまだしも、毎回となるともうこれは言い逃れが出来ない。
ただし、それが事実である証拠があればの話。
ホークさんには、お世話になっているし、悪い人ではないことは分かっている。
だからと言って、全てを鵜呑みにする事は出来ない。
何故なら、ルルルの命が掛かっているから。
「ルルルが道に線を引いたり、分岐点の目印になるように杖を置いて行ったりしたと言う証拠はあるのですか?」
今まで聞く側だった僕は、逆にホークさんに質問をした。
ホークさんは、一瞬少しだけ戸惑った表情を見せたけど、直ぐに冷静になり「私が見ていました」と答えた。
「別にホークさんを疑っている訳ではありませんが、ホークさんが見ただけでは何の証拠にもなりませんよ」
「どうしてです?」
「つまりホークさん、貴方はルルルを処刑しようとする側の人です。そのためには処刑しやすい理由を作る事も可能だと言う事です」
「私は、そんな。ルルルさんが頻繁に杖を替えたことはカイさんもさっき言っていたではありませんか」
「そうです。僕はルルルが杖を何度も替えたことは知っています。でも、その理由までは知らない」
「理由は、ミカールの追跡部隊に道を知らせるために決まっているでしょ。それ以外に何があると言うのです?」
「ホークさんの考えは、全てひとつの憶測に基づいています」
「憶測?」
「そう。ミカールの追手が来るかも知れないと言う憶測です。猫から人間になったルルルは飽きっぽい性格ですから、杖を頻繁に替えたとしても何の不思議もない。もしもホークさんが見たと言う、道の分岐点に何らかの目印のために杖を置いたとしても、道に迷わないためだと考えられなくもない」
「しかし、あの者は短剣を隠し持っていて、ユーラシウス様にそれを投げました」
「そこからは僕も事実として認めます」
「だったら何も問題はないはずでは?」
「いえ。問題はあります」
「と、言うと?」
「ルルルに何の証言もさせずに処刑しようとしている事です」
「罪を犯したものが罰せられるのは、当然のことでしょう。違いますか?」
「僕は違うと思います」
「違うとは?」
「罪を犯したものは、罪の重さを反省して、償わなくてはならないと思います。その過程の上での罰は仕方がないと思いますが、反省も償いもなくただ罰を与えるやり方には賛成できません」
「俺も、そう思います」
今まで、じっと話を聞いていたライシャが僕に賛同してくれた。
ホークさんは少し考えていたが「これは既に決められたことです」と言い残してテントから出て行った。




