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◆◇◆捕らわれたルルル◆◇◆

「どうだった?見つかった?ルルルは酷い事をされていないだろうね」

 テントに戻ると、直ぐにライシャが状況を聞いて来た。

 縄で縛られてはいたが、体中痣だらけになるとか鞭で打たれたとか暴力を受けた形跡もなく、着ていた衣服も乱れが無かったので見た限りの状況をそのまま伝える。

 余程心配していたらしく、そこまで聞くとライシャは「ああ、よかった」と大きな安堵の溜息を着くとテントの中で寝転んだ。

 それきりライシャは何も言わない。

 寝てしまったのか……?

 そう思い顔を覗き込もうとした時、忘れていた草を掻き分けて来る足音が聞こえた。


 “ホークさんだ!”


「カイさん、ライシャさん、少しお邪魔しても宜しいですか?」

 ホークさんは僕たちのテントに、いきなり入って来るような野暮な事はしないで、テントの前で足を止め丁寧に聞いて来た。

「だ、大丈夫です。どうぞ」

 ついさっきまで、ホークさんの足元近くの茂みに隠れて居た手前、少し焦ったが直ぐに平静を装って返事をした。

「失礼します」

 テントの入り口に掛けられた葦を編んで作られた扉が捲られ、身を屈めたホークさんが入って来た。

 どうやら、武器らしきものは持ってはいない。

「すみません。長い旅をしてこられたと言うのに、こんなことになって何もお構いが出来なくて」

「いえ、それはこんな時ですし、構いません。僕たちの事はいいですがユーラシウスさんをはじめアーリア、それにルルルはどうしているのですか?」

「アーリアさまはユーラシウス様の傍に居ます。ルルルさんは残念ですが……」

 ホークさんは今、アーリアの敬称として“さん”ではなく“さま”を使った。


 “何故!?”


 でも、今はそのことを考えている場合ではない。

 もっと重大な問題がある。

「ホークさんたちは本当にルルルを処刑するつもりなのですか?!」

「仕方がありません。なにせあの者はミカールの手先でしたから。つまりあの者はユーラシウス様を暗殺しに来たのです」

「どうして、それが分かると言うのです!?ユーラシウスさんに手を掛けたのは何か違う理由がある事も考えられるのではないでしょうか?」

「いや、おそらくそれはないでしょう」

「なぜ言い切れるのです!ルルルがミカールの手下だと言う証拠でもあるのですか?」

「証拠はカイさんもご存じの通り、あの者はここが近くなった時に合図の“のろし”を上げようとした。違いますか?」

 それはここへ辿り着く前の晩、皆が寝静まった後に火を起こそうとしたルルルをアーリアが止めた事。

 アーリアから聞いたのかも知れないが、肝心な事が抜けている。

「あれは焼き魚を食べたかったからで、悪意はない!」

「本当に、そうでしょうか?」

「間違いない。現にそのあとで僕が煙の出ないストーブを作ってあげたら、翌朝アーリアとそれを使って調理をしていた」

「なるほど……しかし、あの者への疑いはそれだけでは無いのです」

「と、言うと?」

 他に証拠があると言うホークさんに対して、僕は少し苛立っていた。

「ルルルさんは、旅の最中に杖を使っていましたよね」

「それがなにか問題でもあると?」

「杖は何の目的で使われたのですか?」

「足がつかれないためだ」

「もしかしたら、それもあるかも知れませんが、あの者は杖を使って道に線を引いていましたね」


 “道に線……たしかに、そんな事もあった”


「もうひとつあります。ルルルさんは杖を頻繁に替えていた事は御存じですよね?」

「知っているが……」

 僕がムキになっているのを察したホークさんは“あの者”と言う表現を“ルルルさん”に改めた。

「何のためだと思います?」

「使っている杖に飽きたからだと本人が言っていた」

「ルルルさんが毎回何所で杖を捨てていたのか、カイさんは御存じですか?」

 そう言われて困った。

 僕は、その事にあまり気を使っていなかったから「知らない」と答える以外なかった。

「道の分岐点です」


 “分岐点!?”


 おそらくホークさんは僕たちを空から見張っていたのだろう。

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