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◆◇◆我儘なルルル①◆◇◆

 休憩をしたあと、ルルルが俄然やる気になり、自分で歩き出した。

「いつまで続くかしら」

「私だって、やるときは、やるのよ!」

 半分揶揄っているアーリアに対して、ルルルは棒を剣のように振り回しながら威勢よく答えた。

「それは何?」

「何って、剣に決まっているでしょ」

「でも、木の棒だよ」

「木の棒だって、私の反射神経に掛かれば立派な武器よ。何しろスイングのスピードが違うから」

「あらそう。くれぐれも、その棒で私たちを叩くのだけは止めて頂戴ね」

 アーリアはルルルの、やる気に対して無関心を装って先頭を歩き出した。

 その態度が気に入らないルルルが僕の傍まで寄って来て小声で呟く。

「チョット先に一緒に住んでいたからって、もうカイを自分の物だと思っているわ。ねえ、違うよね。私だって魅力的でしょう?」

 ルルルが、まるで甘える猫のように体をスリスリしてくる。

 まあ、猫なんだけど……。

 しかし、こう素直に甘えられると僕も悪い気はしない。と、言うか、いい気になってしまいそうだ。

 人前ではいつも甘えた感情を表に出さないアーリアとは正反対に、旅の最中でも甘えて来るルルルが可愛くて、思わず言わなくても良い事を口に出してしまった。

「ルルルも充分、魅力的だよ」と。

 自分自身、言ったあとで後悔した。

 まるっきり鼻の下が伸びているみたいだし、完全に“いい気になっている”

「ワー!有り難う♡」

 案の定ルルルは俺の腕にしがみ付いてきて、それを見たアーリアは案の定、何も言わずにスタスタと先に行ってしまった。

「二兎を追う者一兎も得ず。とは人間が発明した最高の格言だな」

 ライシャが、そう言いながら俺の横を通り過ぎる。

「カイは二兎なんて追っていないわよ。失礼しちゃうわ!ねえ」

 完全に“甘えん坊モード”になったルルルが抱きついて離れようとしない。

 そうこうしている間に、アーリアはもう消えそうなくらい遥か向こうを歩いているし、ライシャとだって大分離れてしまった。

「置いてけぼりになってしまうから、僕たちも頑張って歩こう!」

「大丈夫よ。万が一後ろからミカールの手下が襲って来ても、私がこの棒で叩きのめしてやるんだから!……ねえ、チョット聞いているの?ねえ、カイったらぁ」

「聞いているけれど、今は敵に襲われる事より、仲間に追いつきたい。だからルルルも急いで!」

「は~い、つまんないの」

 残念そうに僕の後をついて来るルルルは、本当に少しつまらなそうに、剣に見立てた木の棒をクルクルと回していた。

 しばらくすると道に線を引いて遊び出したかと思えば、いつの間にか剣は杖に変わっていた。

 途中ルルルが森の中に入って行ったので、待った。

 何のために隠れるように一人で森の中に入ったのか分かっているので、戻って来たルルルの姿を艶めかしく感じてしまい恥ずかしくてまともに見る事が出来ない。

 恥ずかしいのは寧ろルルルの方に違いないはずなのに、溜まったものを出してスッキリした余裕なのか平然として棒を振りながら戻って来た。

「あれっ、その棒……」

 ルルルの持っている棒が、いつの間にか変わっている事に気が付いて聞くと。

「あの棒はもう飽きちゃったから、森に入ったついでに新しいものに替えたの」と、平然と言った。

 僕は、少し良からぬ方に考えが向いていたので、妙に“あの棒は、もう飽きちゃったから新しいのに替えた”という部分が気になって仕方なかった。

 確かにこの美貌とスタイルを持ってすれば、いくらでも新しい棒は手に入るだろう。

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