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◆◇◆再会②◆◇◆

「まあ4人だと少し狭いけれど、くつろいでくれたまえ」

 ライシャの言葉にアーリアが無言で蹴りを入れた。

「いてぇな……」

「さっきも言ったが、ここは私の家だ。少しは遠慮しろ」

「あれ、アーリアが自分の事“ワレ”じゃなく“わたし”って呼んでいる。どうしたの?」

 ルルルが、その言葉に突っ込みを入れる。

 気にしてはいなかったが、確かにルルルが言う通り。

 狼の姿の時は、ずっとワレだった。

「うるさい! ワレは狼言葉だから、人間の姿の時はふさわしくないから、人間にならって“わたし”と言っているだけだ」

「本当に、それだけの理由~?」

 ルルルがアーリアの顔を、からかう様に覗き込む。

「それだけだ」

「でも、少し顔が赤くなっているよ」

「うるさい!これは部屋の熱気にやられただけだ。カイもボーっと見ていないで暖炉に火くらい入れろ。ワレは寒くなって来た」

「あれ? 人間の時は“わたし”じゃなかったの??」

「ええい茶化すな!それよりもルルル早く服を着ろ!いつまでも山猫じゃないんだぞ!」

「あら、アーリアは私たちが来るまで、カイの前で厳格に肌を見せなかったのかしら?」

 みるみるアーリアの白い顔が真っ赤に染まる。

「嵐に飛ばされて、さぞ不自由をしていると心配して探し回っていたが、その必要は無さそうだ。切り刻んで今夜の晩飯にしてやる!」

 そう言うと、背中に背負っていた剣を抜いた。

 ルルルは「キャー」と叫んで僕の背中にまわり抱きついて来た。

 その柔らかな膨らみと暖かさに、僕はボーっとしてしまう。

「カイ、助けて。私怖い……」

 背中に抱きついたルルルが、押し付けてきた胸をスリスリする。

 アーリアに比べて少し小振りだけど、充分大きくて魅力的な胸。

「カイ、ルルルから離れろ! さもないと二人まとめて切り捨てるぞ!」

「ぼっ僕もぉ~??」

「嫌なら、今直ぐルルルに脱衣場に行って着替えるように言いなさい!」

 僕はアーリアに言われるまま、ルルルにそう言うと、彼女は素直に「ハーイ」と言って脱衣場に走って行った。

「ふう、やめてくれよ。肝を冷やした」

「言っておくけれど、私、嫉妬深いからね……」

 アーリアは背中を向けて、誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。

「じゃあ、暖炉に火を入れるね」

「ああ、スマナイ」

 そう言うと、アーリアは脱衣場に向かった。

「もう喧嘩するなよ」

「うん。悪いが先に風呂に入る」

「いってらっしゃい」

 僕たちのやり取りを聞いていたライシャが「あんなツンツン娘とずっと一緒だったの?疲れない?」と心配そうに聞いて来た。

 そう言えば、あんなにルルルとライシャの事を心配していたくせに、喜ぶどころか怒ってばかり。

 しかも、僕にだって厳しい態度。

 いったいどうしたんだろう??

 なにか、今のアーリアような態度を地球に居た時は、ある言葉で表していた記憶があるが思い出せない。


 ”ツンドラ?”


 いや、これは地下に永久凍土が広がる降水量の少ない地域のことを表す地理用語。

 たしかにツンドラに似たような言葉だった気がするが、思い出せないでいた。

「じゃじゃぁ~ん」

 脱衣場から出てきたルルルが着替えた姿を披露した。

 アーリアの質素な服とは違い、まるで王室御用達のような金色の煌びやかな衣装。

 開襟の襟には飾り模様が刺繍されたノースリーブのミニスカート。

 腰には太い皮ベルトが巻いてあり、アクセントになっている。

 シューズも革製で、脱げにくいようにレギンスの代わりに、ひざ下まで紐が編み込みになっている。

「どうした。凄く綺麗じゃないか」

「うふっ。ありがとう。町で買ったの」

「どうやって?」

「嵐に吹き飛ばされたとき、干物や干し肉を入れた籠が傍にあったので、それと交換に……ごめんなさい。勝手に使っちゃった」

「いや、役に立ったなら、なによりだよ」

 そう言って僕は外に向かう。

「カイ……どこに行くの?」

「風呂に薪をくべて来る。君たちはゆっくり暖炉に当たっていてくれ」

「……」

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