◆◇◆仕掛け②◆◇◆
暫く待っていると兵士たちが来た。
「なんだこりゃ。嵐でもあったのか?」
「なんで俺たちがこんなことしなくっちゃならないんだ?」
「安い給料でこき使われよー」
「そうそう、エサもろくに食わせてもらえねえし」
「まあ、兵士だけど戦争が無いのが一番いいよな」
「ちげえねえ」
「それにしても、この竹は一体何なんだ?」
「竹にやられて、木の皮を漆で固めて作った甲冑がボロボロになっちまう!」
文句を言いながらも、竹やぶを出て、今度は砂利を敷き詰めた道に入って来た。
「イテテ!」
「なんだ今度は?」
「尖った石だ!」
「こんな所を歩いていたんじゃ、草履がボロボロになっちまう」
兵士たちは痛さと疲れで、あまりしゃべらなくなる。
「わっ!」
先頭の兵士が大声を出して驚くと、最後尾の兵士が「今度はなんだ?」と聞いた。
「石で道が塞がっているぜ!」
「あーもう通れねえ」
「もうこれで、新しい人間って奴を探しに行かなくて済むな」
「帰って、どういう?」
「石で、道が塞がれて前に行けませんでした」
「ほかの道はなかったかと聞かれたら?」
「もちろん、無かったと答えるさ」
「それで、信用するか?」
「そうだな、人間て奴は疑り深い奴だからな」
「そうそう、それに残忍だし」
「屹度ピカピカの刀を持って帰ったら、なんで石を切って道を進まなかったのか!って怒られるぞ」
「気分次第じゃ処刑されるかも」
「でも、この重いだけの剣で、石なんて切れるのか?」
「切れるんじゃねえか。だって鉄なんだから」
「お前チョット切ってみろよ」
「えいっ!」
「駄目だ、ひん曲がっちまった」
「お前のは手入れが悪いから切れないんだよ。俺の剣だったら簡単に……えいっ!」
「なんだ、お前のは先がつぶれて三角になっちまったじゃねえか」
「よーし、俺のだったら――えいっ!」
「ひゃ~柄が抜けて剣だけが飛んで行っちまった」
ワイワイ騒ぎながらも、兵士たちは石を越えて先に進んだ。
「あー、やっと広い所に出た」
「も~剣も草履も甲冑もボロボロだし、こりゃあ是が非でも人間を見つけて捕まえて帰らないと酷い目にあわされるぞ」
「違いない。何せ人間って奴は冷徹だからな」
「あーあ、戦争がないから兵士は楽だと思っていたけど、今こうして剣が柄から抜けて飛んで無くなって、甲冑の大部分がボロボロになって、歩くたびに足が擦れて痛い草履も無くなってみると、兵士なんかやめて元の猿に戻りてえな」
「そんなことバレちまうと、処刑されるぞ!」
「仕方ない、ボロボロになっちまったけれど人間を探しに行くか!」
「おい、なんだか臭くないか?」
「おならでも、したのか?」
「いや、そう言う臭さじゃなくて、キナ臭い」
「あっホントだ……」
「あっちの方、燃えているぜ!」
「やばい、山火事だ!逃げろ!!」
「おい、逃げ帰ったなんてバレたら、間違いなく処刑されるぞ!」
「じゃあ、どうする?」
「どうするもこうするもねえ、帰らなきゃいいんだよ!」
「そうだ!もう兵士はやめだ!」
「こんな甲冑も剣も要るもんか!」
そう言って兵士たちは一目散に来た道を逃げて行った。




