◆◇◆仕掛け◆◇◆
相手は10人。
武器はアーリアと似たような鉄の剣。
兵士たちがどれほど強いのか、武器の威力がどれくらいなのか、着ている甲冑の防御力がどのくらいあるのかは分からない。
ただ10人の兵士が甲冑を着て剣を持っている事だけが分かる。
今僕たちが居る位置からなら、相手は良く見える。
戦おうと思えば、もしも敵が僕たち目掛けて突進してきたとしても、この位置からなら7人は弓で倒すことが出来るだろう。
あとの3人はアーリアが倒す。
と、これはあくまでも僕の思い通りに事が運んだ時のシナリオ。
僕の弓を跳ね返すような鎧、もしくは僕の弓の命中率がいつもより低かった場合は?
また、相手の武器が強力過ぎるとか、アーリアよりも相手が強かった場合はどうなる?
戦うには、相手の情報が少なすぎる。
これは練習や試合ではない。
一旦動き出せば、お互いの命が掛かっている。
そう、自分たちだけではなくて“お互い”の命。
もしも、僕たちが勝ったとしても、奪うべきではなかった命に後で気が付いても時は戻せない。
「やるか?!」
真剣な顔のアーリアに僕は「やらない」とだけ答えた。
アーリアは不満な顔もせずに敵を睨んだまま「わかった」とだけ返事をした。
僕は考えた。
どうするべきかを。
ひとつヒントが浮かんだ。
それは、強い奴の定義。
なにも力や素早い事だけが、強いと言う訳じゃない。
強さとは何か?
力・俊敏性・武器・防具・魔法・立場・持っている権力・意志・目的意識・優しさ・愛・残忍な心……。
直接的に見える強さから、間接的で見えない強さまで数限りなくある強さ。
“これだ!”
まず相手の強さを試そう。
そして、もし弱い相手なら戦わずして追い払う事が出来るはず。
「アーリア、手を貸してくれ!」
僕はアーリアを連れて一旦来た道を引き返した。
そして、道に幾つもの仕掛けをした。
怪我をさせるための仕掛けではない。
相手の強さを確かめるための仕掛け。
先ず竹の生い茂った森の中で、アーリアに竹を切ってもらい鋭い剣でなぎ倒された竹を集め、まるで嵐が去った後のように道に敷き詰めた。
川の傍に道では、河原の石を砕いて砂利道のようにばら撒いた。
大きな石がある場所では、それを倒して道を塞ぎ、風上に広い空き地がある所では、そこに枯草や木の枝を集めておいた。
全ての準備が整ったあと、僕とアーリアは最初の竹を敷き詰めた場所が良く見えるところでミカールの兵士たちを待った。




