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◆◇◆犬と猫と水◆◇◆

 焚火に火が入ったところで、休憩がてら小川の生態系を見る事にした。

 泉の時は運よく魚が居たけれど、ここに居るかどうか……それに森の中で狩りをしたり果物や野菜を探すのは時間的に遅すぎる。

 なにせ僕の眼は暗くなると利かないので、暗がりでの行動は狩りをするどころか、狩られるための行動になってしまう。

 沢山汗をかいたので、シャツもズボンも脱ぎ捨てて水の中に入った。

 少しひんやりとした水が、旅で火照った体に気持ち好い。

 何度か潜ってみたけれど、ここには泉に居たような大型の魚はいなくて、岩を持ち上げても小さな魚が隠れているだけ。

 もちろん魚たちは僕のような人間よりもズット反射神経が良いから、手で捕まえることはできないし、棒で突き刺すこともウサギの骨で作った釣り針で釣ることもこの小さな魚には大き過ぎて使い物にならない。

 取るとしたら網くらいなものか……。

 直ぐに諦めて水遊びに切り替えると、アーリアも珍しく水の中に飛び込んで来て遊び出した。

「アーリア。君、水は平気なのか?」

「ええ、泳ぐのは好きよ」

「そうなんだ。僕はてっきり狼は泳がないのかと思っていたよ」

「狼だってチャンと泳ぐよ。それにワレは狼犬だから、その影響なのか水遊びは大好きよ」

 そう言いながら、アーリアは僕の肩に掴まり、頭の上に乗ってこようとする。

 さすがに50キロ近い重量に乗られると、簡単に沈められた。

 しかし僕だって黙って沈められっぱなしじゃない。

 潜ってアーリアの足を引張たり、飛び上がって逆に上から圧し掛かったり。

 アーリアの体は柔らかいので、圧し掛かっても直ぐに口で威嚇して来る。

 もちろんアーリアは威嚇するだけで噛み付くことはない。

 だけど、潜った状態から下に引くと、決まって水面に逃げようとする。

 しつこく繰り返すと、何度か顔を潜らせて威嚇して来たけれど、水面の時と比べて意外に動きが鈍く感じた。

「くぉ~ら、ワレの泳ぎの邪魔をするでない!」

「ゴメン、ゴメン。でもアーリアって意外に泳ぎが上手だね」

「まあ、人間ほどではないけどね」

 そう。

 人間は練習すれば時速5~6キロほどの速度で泳げるようになるけれど、イヌ科の動物の場合は当然種類によって速度が異なるが、一番泳ぎの上手いゴールデン・レトリバーでも時速4~5キロほど。

 僕には泳ぎの邪魔をするなと言いながらアーリアは、水を掛けて来たり背中に乗ったり抱きついて来たりとチョッカイばかりだしてくる。

「もー! しょうのない奴だ」

 僕が反撃に出て、水上に沢山の飛沫が舞い上がる。

「もー、お二人さん仲のお宜しい事で。そんなに濡れて何が面白いんだかサッパリ分からないわ」

 退屈そうに河原でルルルが見ている。

 そう。

 ルルルは猫だから濡れるのが大嫌いなのだ。

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