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第2話 「召喚」の王女

 キラキラ輝くような碧い目。

 流れるようなブロンドのロングヘアー。

 純白のドレスのようなものを身に纏うその子は、暫く驚きの表情を向けていたかと思うと少し恥ずかしそうにゴホン、と体裁を取り繕うかの様に咳払いをして俺に向き直った。


「あの……大丈夫ですか……?」


 この世界で初めてとなる運命的な出会いは、部屋の窓から差し込む月の光に彩られたのだった……。



          §



「王城!? はじまりの街とかじゃなくて!?」

「はい! ここは王都“マザーズシティ”にあるお城ハークレアン城です!」


 目の前の少女、いや王女イリアはいかにも楽しそうな様子で現在地を説明してくれた。……しかし何をそんなにはしゃいでいるのだろう。犬なら左右に揺れる尻尾が見えるぐらいの勢いだ。


「分かったから落ち着いて……! いや俺が落ち着かなきゃいけないんだった……。いきなりこんな所に出てこれからどうするか……」


 そんな俺の呟きを聞いてイリアはハッとして少し沈んだ顔になった。


「そうですよね……私ったらお話し相手を召喚出来たことがうれしくてつい……。レンさんは人間だから帰る所があるのですものね……。私はてっきりポルクルかキャピタルが来てくれるものだと思っていたのでつい……」


 よく分からない単語が飛び交う中、俺は彼女のある言葉に反応した。


「召喚した……? 俺を……?」


 俺はあのフォルなんとかっていう女神からこの世界に転生させられて来たはずだが……。


「そうです!」


 急に無い胸を張るイリア。


「私はお話しが出来る存在の召喚を夢見てこれまで研鑽を続けてきたのです! そしてお父様が居ない今日この日、夕食を終えて急いで自室に戻ってきたこのタイミングで決行に及んだのです!」


 ババーン! ……と効果音でも入りそうな口調でまくし立てるイリアに俺が唖然としていると……


「疑っていますね……? それでは証拠を見せてあげましょう!」


 イリアはニヤニヤしながら待ってましたと言わんばかりの顔でそう言うといきなり自分のドレスのスカートを捲り上げた。


「どうです! 驚いたでしょう! 私の文字(スペル)は『召喚』なんですよ!」


 内腿(うちもも)に記された、なにやら円の中に崩した字で書かれた「召喚」という文字よりも先に、俺は別の所に目がいってしまった。自信満々で奇行に及ぶイリアのあまりの衝撃に頭の中も視線の先も真っ白になっていた俺は、慌ててイリアの手を下げさせる。


「女の子がなにやってんの!? 男の子の前でこんなことするのはお兄ちゃん許しませんよ!!」


 慌てるあまり可笑しな言葉遣いになっている俺をイリアは不可解な顔で見つめていた。


「驚きませんの?」

「驚いたよ十分な!」


 そこから数十分、なんらそういった知識を持っていないらしいイリアに、昔妹を叱った時のように女の子としての恥じらいや常識を延々説明した。……後半自分の趣味が入っていたような気がしないでもないが気にしないことにする。




          §




「男性の方とこんなにたくさんお話したのは初めてです……」


 長いお説教の後、イリアは儚げな笑みを浮かべながらそう言った。


「私は王女として毎日様々な事を教えられて生きてきました。作法、言葉遣い、戦闘訓練、文字(スペル)の扱い方……。朝から晩までそれらをこなして夜になったらこの部屋で眠りにつく……。必要以上のことは話さず、毎日この『召喚』の文字(スペル)を扱えるように努力しました。……強力な文字(スペル)なので周りの皆さんはとても期待してくださいました。使いこなせば一国の軍隊にも匹敵する戦力を行使できるからです。……でもわたしはそんなことよりお話しができるかもしれない存在をこっそり呼ぶことを目標に研鑽を積むようになっていったのです」


 イリアは淡々と己の過ごしてきた日々を語った。

 それを俺は隣で時折相槌を入れながら聞いていた。……本当は他に聞きたいことが山ほどある。

 しかしそれを聞かなかったのは、目の前の少女が先ほどとはうって変わって悲しそうな目をしていたからだろう。

 俺とイリアの“お話し”はその後しばらく続いた。


「ありがとうございます。話したら何かすっきりしちゃいました」

「なら良かったよ」


 こんな平凡な俺でも悩みがあるように、このある意味孤独なお姫様にも悩みがあるんだな……とイリアの話を聞いていた俺は、先ほどから気になっていた事を聞いてみた。


「なぁ、すぺるってなんだ?」

「え……?」


 イリアはポカンとした顔でこちらを見た。


少し加筆修正を行いました。

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