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怖ろしい受付嬢  作者: 舞夢
4/12

事態は好転、しかしアパートの前に受付嬢が・・・

超一流企業の専務理事と受付嬢にそこまで頭を下げられては、「二度と付き合わない」と決めたけれど、外に出ることは、一旦は保留した。


受付嬢の名簿確認ミスについては、彼女が謝っていることもある。

そのミスの部分については、事務的なミスであり、彼女の主観が入ったミスではないとして、我慢をすることにした。

しかし、どうにも納得できないのは、専務理事との話を持ち出す前から、一般サラリーマン風のスーツを着ていないことで、「不審者扱い」とされたこと。


専務理事に尋ねてみた。

「仮に私の今日の服装が問題があるのなら、出来ることならば事前に、御社に伺いするマナーや決まりを教えていただきたかったのですが」

「例えば、スーツを着込み、ネクタイをキチンと締めなければ、御社のビル自体に入れないとか」


専務理事は、ますます平身低頭。

「いえ・・・全く、そのような規程などありません」

「あくまでも、当方でお願いをして、ご足労願ったのですから」

「本当に申し訳ありません」

「あくまでも、当方の教育が不徹底のため・・・」


受付嬢は、その顔を抑えて泣きじゃくるのみ。


泣けば許されると思っているのだろうか、そう思ったけれど、いつまでも泣かせているのも、それはそれで問題がある。


「わかりました」

「本来のお話に」

と専務理事に会釈し、彼女への抗議は、しないことにした。


その後は、専務理事直々の案内で、専務理事室で話をすることになった。

その企業が英国に進出した場合の英国各地の注意事項や、EU離脱に関わるヨーロッパ、アメリカとの内部事情、ロシアやアフリカの話。

英文学者ではあるけれど、英字新聞やフランス語、ドイツ語の新聞もよく読む。

また、英国留学中の友人も英国を中心にして、ヨーロッパ各地に住んでいる。

今回の専務理事との話の前に、彼らから潤沢過ぎるほどの情報や資料を受取り、全て和訳、微細情報も付記した資料を再構築した。

それも、そのまま議論にし、手渡した。


専務理事は

「本当にありがたいことです」

「先生の情報は、我が社の死活問題でした」

「素晴らしい情報で、社長理事と会長理事にも、報告させていただきたいのですが」

また、頭を下げる。


「ああ、全然、構いません、報酬もいただくものではありませんので」

確かに、この程度の仕事で、報酬を受取る気持ちなど、まったくない。


その後は、また専務理事の案内で、会長室にて、社長理事と会長理事に面会。

ここでも、多大な感謝を伝えられた。


帰りは、「お食事でも」と誘われたけれど、あいにく夜の授業もあるので、辞退。

貧乏学者にとって、突然の休校は、学内の査定にも響く。


全ての話を終えて、ビルを出る時には、社長理事と専務理事が、わざわざお見送り。

最初入った時とは、大違いになった。


メトロの駅も近いので、そのまま地下鉄で大学へ。

車で送ってもらうのは辞退した。

メトロのほうが、気楽で断然早い。

その後は、いつも通りに授業をこなした。

そして都営線、京王線経由で、杉並のアパートに帰宅、これもいつも通りだ。


ただ・・・いつもと違うのは、我がアパートの前に「怖ろしい受付嬢」を発見してしまったことだ。

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