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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クリスマスカラー

作者: 三田 元

「わ、わかんないよ」

何でわかんねーんだ!


怒号が飛ぶ。会議室に。

「そうやってグダグダやってるから、

いつも大事なところで間違うんだろうが!」

「っぐ、頑張ってるって!」

「気持ちがどうこうじゃねえんだよ!」


みてられない。

ただ、僕は黙って見てるだけだった。


「どんな気分だよ」

「な、何がっ」

「お前みたいに低脳なのに

最高執行者勤めてる気分はよぉ!」


ぶっ

という声とともに

深緑色の机の上の資料に、

赤い斑点が広がった。

タクミがトモキを殴ったのだ。


おい、

「鼻じゃなくて腹とかにしとけよ」

僕はそう諭す。


「お前は耐えられんのか」

今度は僕の方へ視線を向ける


僕だって耐えられない。

そいつの判断ミスで1人同僚が死んで

耐えられる奴がいるのか。

ふざけんな。


明日また新宿のマイランドタワーに来い。

そう言い残して僕たちは会議室を後にした。




タワーの外はクリスマスに向けた装飾が綺麗だ。

10メートルほどのツリーも見事に着飾っている。

電飾が明るくて眩しい。


どうする。

そう問いかけるタクミは

「ぶっ殺してやる」という表情のままだ。


「とにかく一旦家に帰って落ち着くよ。

もうあれじゃあトモキもラチがあかない。」


黙って頷くタクミを横目で見る。


「じゃあまた明日、お前も来いよ」

「あぁ。」


このままだと本当に殺しかねないな。

そんな心配をしながら家に向かった。

新宿の夜は静かだ。




予感はほとんど当たった。次の日の朝、会議室に入ると、タクミとトモキがいた。


馬乗りになっているタクミは、

トモキをまた殴っているのだと思った。

「おい!」

そう言って近づいたらわかった。

トモキが泡を吹いて気絶していた。


救急車!


そう言われた僕はすぐにスマートフォンで

呼び出した。


トモキはこのまま死んでしまうのか。


数日後トモキは意識を取り戻した。

しかし、後遺症のせいか目は虚で

口は半開きのままほとんど植物状態だった。


トモキ。



僕にはわからない。

死ぬよりも生きているだけマシという意味が。


植物状態となったトモキは

自分が植物状態だと認識する脳はあるんだろうか。


植物状態となった人間を抱える家族は

何を思うのだろうか。




あの日、

あの日僕より早く来ていたタクミとトモキは

一体何をしていたのか。


タクミがやったんじゃないのか?

言えるわけがない。


そんなくらい思いを心に落としたまま、

僕は数ヶ月後、転勤を言い渡された。


その出来事から数えると今日で約1年。

その疑問は永遠に知ることができなくなってしまった。


タクミの訃報が会社内部で報告されたのだ。


あのタクミが急に?



僕は、

何を思いながらこの先生きていけばいいんだ。


いっそ、死ぬことができれば楽なのに。


そんなことを考えていると、退勤時間になった。

僕は会社の外に出た。


外には新宿の社前に似たクリスマスツリーが、

1年前と同じように電飾を着飾ったまま立っていた。


電灯はついていなかった。



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