冬の日々
赤ん坊は、よく泣いた。お腹がすいては泣き、嫌なことがあれば泣き、機嫌が悪ければなく。獣人の子も人の子も変わらないようだ。
ただ、成長のスピードだけは違う。獣人の子は厳しい自然界で生きられるように体の成長が早い。ミルクを飲んだのは初日だけだった。次の日からは離乳食と言うより、普通の食事。立ち上がるのだって、すぐにマスターした。たまに足下がおぼつかないが、よく歩いている。言葉は、どんどん覚えているようだ。環境に対する順応性がとにかく高い。ある程度外敵から逃げられるだけの成長をすると、そこからはゆっくりと大きくなる。目の当たりにした時は驚いたが、意思疎通が早い段階でとれることはありがたかった。私が薬を作っている間、興味深そうに薬草を眺め、匂いをかいでいる。そんな姿が可愛らしく、癒される。自分では気づいていなかったが、この世界に来て緊張していたのだろう。この子を拾ってからは、肩の力が抜けた気がする。疲れた心がゆっくりと癒されていく。今の私にとって一番リラックスできるのときは、この子を抱いて寝ている時だった。少し高めの体温が心地よかった。
こうして私たちの冬は、穏やかに過ぎていったのだ。