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8人の魔女  作者: 雪椿
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出会い

 今日も天気が良かった。気温も秋にしては温かく、風も強くない。それなのに、迷いの森がざわついている。魔女の血が教えてくれる。森の中の異変。迷った末に、マントを着こみフードを目深にかぶって認識疎外の魔法を使用したうえで、森に入った。異変のもとは森の中間あたり。慎重に歩みを進めていく。木々が途切れたあたり、ちょうど広場のようになっているところにそれはあった。籐の買い物かごのようなものから赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。この森に棄てるということは、死を意味している。しかも季節は今から冬に向かうのだ。獣に食べられなくても、凍死してしまう。赤ん坊の死を望むのなら、産なければいいのに。私の中に起こった感情は、怒りだった。なぜ無責任に産むのか。育てられないなら、孤児院に預ければいい。許せなかった。わざわざ自分の身を危険に晒してまで、ここに捨てに来る意味が分からなかった。

 前の世界での記憶があるから特に。子供が産めないことでさんざん悩んでいたし、不妊治療のつらさも体験した。女として欠陥品だと言われたことさえあった。治療の結果に一喜一憂した。自分の感情をうまくコントロールすることさえ上手くできないときもあった。子供を持つということがどれだけ大変か、分かっていたから・・・・赤ん坊が元気に泣いてくれるなら何にも代えがたいはずなのに。元気で生きてくれているならそれだけで嬉しいはずなのに。まるでもののように棄てるなんて。

 気づけば赤ん坊に近寄り抱きあげていた。その時赤ん坊の頭を覆っていた布が外れ、頭に獣の耳が付いているのが見えた。人と獣人とのハーフ。獣人は基本的に南の地方に多い。けれど身体的に優れているので、旅をしている者も多いとか。きっと相手が獣人と知らずに縁を結び、産まれた子供を見て驚いたのだろう。北の地方では閉鎖的なところも多く、獣人に対する差別もあるという。しかし、どんな事情があるにせよ、産んだのなら責任を持つべきだと思う。ここに置きに来たのは、自分以外の誰かに託したかったのだろうか。生んだ母親のせめてもの愛情なのか、分厚いタオルが赤ん坊を寒さから守っていた。

 誰もいらないというなら、私が育てよう。たとえハーフでもかまわなかった。ここに置き去りにするなんてできなかった。赤ん坊特有の少し高い体温と、命の重みが抱いた腕から伝わってきた。

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