第五話 はじめての 前編
約束の時間から10分がたった。
リョウはいまだにやってくる気配がなく、駅前の公園のベンチに座って、ミキはじっと待っていた。
(リョウ君、何してるんだろう?)
10分前行動を常に心掛けているミキにとって、遅刻など想像が付かず、本気で心配している。
・・・20分がたった。
(あ〜もう映画始まっちゃうよ・・・)
徐々に苛立ちを募らせるミキ。
30分後・・・
「ゴメ〜〜〜ン!!」
リョウが向こうから全速力で走ってきた。
その顔はかなり焦っている。
「はぁ・・・はぁ・・・」
疲れ果てたリョウは、ミキの隣に座った。吹きでる汗をハンカチで拭く。
「ミキ・・・待った?」
「何してたの・・・? 30分も・・・。」
ミキは感情をどうにか抑えながら言う。
「あ・・・いや。 その寝過ごしちゃってさ・・・。ハハハ。」
「え・・・!? ずっと寝てたの!?」
ミキは本気で驚く。
そんなミキを見て、実は約束の事をすっかり忘れて夜遊びをしていたなんて、口が裂けても言えないリョウであった。
「あの・・・。 すいません。」
リョウは頭をぐいっと下げた。
「もぉ・・・。 映画どうするの?」
と言って、ほっぺをぷくっと膨らますミキ。
「次のがあるしさ、それまでどっか行っとこうぜ!」
能天気に笑ってみせるリョウ。
その笑顔を見て、少し自分の肩の力がぬけたのにミキは気付いた。
〈中編へ続く〉
今回は第三者目線に挑戦してみました。感想や要望を募集しています!