第二話 ほうかごのおんなのこ 前編
青空高校に通い始めて、一週間が経った。
俺はいまだに、自分が男子オンリークラスにいる事を認めることができず、
何一つ感動のない毎日を過ごしていた。
一番後ろの席の窓から見える女の子の体操着姿に見とれていた。
昼休みになり、俺はクラスの男子数人と、地味な昼食をとっていた。
「それで、リョウ君は部活もう決めたの?」
そう言って俺に話しかける少年ヒロ。高校生とは思えない子供っぽい顔が特徴である。
「いや、実はまだなんだよね〜」
興味津々で俺を見るヒロ。
「ねぇ、一緒に野球部に入らない?」
「野球・・・? ゴメン、全く興味無い。」
そういって軽くあしらったが、それを見ていたもう一人の少年ヤマトが、
「三人来るって先輩に言っちゃったんだよ〜。見学だけでもいいから来いよ。」
ごっつい体つきのヤマトは真剣な目で俺に訴える。
俺は右隣で飯にがっつく少年、ヒカリを指差し、
「彼が行ってくれるって。」
と言った後、ヒカリに頼む!サインを送る。
するとヒカリは急に立ち上がり、
「そ、そんな・・・ぼ、ボク、ヤダーーーーーーー!!」
そう言ってヒカリは教室を飛び出していった。
な、何だヒカリのあの反応・・・?
それを見たヒロは軽く頷き、
「これで決定!!」
と言った。
いや、何が決定かわかんないんですけど・・・。
結局俺は、ヒロとヤマトのおかげで、入りたくもない野球部の練習の見学に参加するハメになった。
のだが・・・
「気合いを入れろぉ!!」
野球部部長のマグナム級の怒鳴り声が、コート一面に響き渡る。
「あざっす!」
「もっと大きな声で!!」
「あざっす!!!」
「もっともっと!」
俺はただ見学に来ただけだというのに、いきなり部員扱いされ、さっきから部長を司令塔に、新入部員数名(俺、ヒロ、ヤマト含め4名)で、大声で挨拶の練習をしている。
「いいか、これからは心優しき先輩達がだらし無いおまえらをビシバシしごいてゆくからな!大船に乗った気持ちで練習に参加しろよ!」
なんか矛盾してないか?
「返事は!」
「ハイ!!」
俺達3人は姿勢正しく前を向き、大声で返事をした。
ヤマトは歯をくいしばり頑張ってるが、ヒロはすでに半ベソをかいている。
というかなんで入ろうと思ったんだよコイツ。
1時間以上続いた夕方の挨拶連呼で、ガラガラになった喉が悲鳴を訴える中、
俺は部長がよそ見をしている間、
「ヒロとヤマトともう一人の人、あとは任せた!」
と言って、全速力でその場から走り去った。
「おっおい!!待たんかぁー!」
部長が気付いた時には、
すでにかなりの距離があった。よって俺は無事に逃げる事に成功。はしたが・・・
明日からどうしよう・・・
ロッカーの前で途方に暮れる。
正直このまま帰るのは気が引ける。
なんか凄い悪い事をした気分のまま、ロッカーに靴を入れ、行き先もなく、階段を上った。
<後編へ続く>