#8: 友達
「いらっしゃいませ、ご客人様。リアン様はこちらでございます。」
翌日、魔法の勉強途中にシエルが家に来た。エルザさんが俺の部屋まで連れて来ている。そして扉が開くと白いワンピースを着たシエルが居た。とても似合っている。
「あ、いらっしゃい。シエルちゃんだっけ?」
「は、はい。村長の娘のシエルです。先日はありがとうございました。」
「うん、別に気にしないで。あ、昨日貰ったオレン食べる?」
「はい、頂きますね。」
俺は戸棚からオレンを二つ取り出して、一つシエルに渡した。オレンの皮は少し硬いので風魔法を使って皮を剥く。
「わぁ…凄い。リアン君は本当に魔法が上手だよね…うーん、あれ…剥けないや…」
僕は風魔法でシエルのオレンの皮も剥く。そして再度魔法の勉強をし始める。
「ありがとう…えっと、リアン君?何やってるの?」
「今は魔法の考察を羊皮紙にまとめてるんだ。ほら、昨日のスリープバインドとかの発動原理をまとめて、他の魔法の応用に使おうと思ってるんだけど…なかなか難しくてね。」
「わぁ…凄い、羊皮紙にびっしり良くわからない文字が書かれてる…」
あ、そうか。使い慣れてる日本語で書いてあるから分からないのか。自分だけで使うし大丈夫。
「…なるほど…シエルちゃん、一つ魔法が完成したよ。」
「え!?魔法が完成した!?」
「まず、スリープバインドは直接脳に特殊な魔法を掛けて眠らせるんだけど、脳に対してエクスプロージョンを使うとどうなるかなぁって。多分やばい魔法。」
「…。」
シエルが少し引き気味だった。やはりこの魔法はやばいか…?取り敢えず誤魔化そう。
「冗談。」
「…。」
ジト目で見つめてくる…とても威圧感が凄い。この魔法は完全にボツ魔法だ。
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「ねぇ、リアン君。ここに飾ってある人形ってリアン君の手作り?」
シエルは戸棚の上に飾ってあるフィギュアを指さす。そこに目をつけるとはお主中々やりおるな。
「うん、僕が土魔法で作った人形だよ。」
「へぇー…凄い良く出来てるね…さっきのエルザさんかな?そっくりだよ。」
それはメイドさんをモチーフに作ったフィギュアだ。他にも色々あるけど…気に入ったのを飾っている。最近は色を塗るのを練習している。あ、そうだ。
「ねぇ、シエルちゃん」
「なぁに?」
「人形のモデルになってくれないかな?」
シエルは一瞬戸惑って、その後直ぐに表情を変えた。とても嬉しそうな顔をしている。
「うん!私で良ければ協力するよ!」
「ありがとう!じゃあ、どんなポーズが良い?自分でやってみてくれる?」
「えっと…じゃあ…」
シエルは様々なポーズをとったが、最終的にピースに落ち着いた。背中に左手を隠し、右手でピースしている。
作り方は、まずは土魔法で大まかな形を生成する。次に、無属性魔法『モジュレーション』で細かい形を形成していく。約1時間程で完成する。最後に色を着けて…
「よし、完成したよ。」
「うわぁ、凄い…そっくりだよ。」
「折角だし、これはシエルちゃんにプレゼントするよ。」
「え!?わぁ…ありがとう!!大事にするね!」
とても喜んでくれたようで何よりだ。そして作ってる途中に思い浮かんだのだが、魔法にモジュレーションをして形を変形させて撃つことが出来そうだ。そんな事を考えていると扉が開き、エルザさんが来た。
「ご客人様、辺りも暗くなって来ています。ご帰宅なさった方がよろしいのでは?」
「え、あっ…ほんとだ。それじゃあリアン君はいばい!ありがとうね!」
「うん、気をつけてね。」
俺はシエルを見送り、自室に戻った。