#5: 天才児と妖精
「…けぷっ……」
取り敢えずげっぷが出た。そして少し後の事を考えよう。
①:エルゼさんが母達に報告
メリット…褒められる
デメリット…どうなるかわかったもんじゃないし、下手したらどっかの騎士団に流されるか、研究される。却下。
②:転生者という事を伝える
メリット…今後の行動がしやすくなる
デメリット…気味悪がられたり、捨てられそう。確実に却下だな。
③:エルゼさんを口封じする
メリット…誰にもバレない
デメリット…どうやって?却下
④:天才児として通る
メリット…まぁ色々と褒められたり、色々与えられそう
デメリット…特に無いが、親がどうするか。これが最善策。
考えていたらセレナとアルスが帰ってきた。さあ、こっからが正念場か…
エルゼさんが出迎えてた。
▲▲エルゼ視点▲▲
「おかえりなさいませ、アルス様、セレナ様。ご夕食の用意が済まされております。ご食事になさいますか?」
それと、問題はあのリアン様…生後6ヵ月後にして魔法が使え、ハイハイで階段をあがり、セレナ様の魔道書を読んでいた…まさしく天才…今報告したらどうなさるのでしょうか…?
「ああ、では食事で。」
「私も食事で。」
「承知致しました、そして折りいって相談が御座います。お食事中にお話させて頂きます。」
話そう。そして天才だと言う事を…あの子は凄い子だ。恐らくセレナ様を超える大魔導士に…
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「それで、話とは何だ?」
アルス様が一番先に口を開いた。
「実は、リアンお坊ちゃまの事でお話があります」
「あら、リアンが?何か問題でもあるのかしら?元々あの子は問題だらけな気がするけど…」
「実は…」
今までの経緯を全て話した。階段へ登り、言葉を解し、魔法が使えるリアンお坊ちゃまの事を。お二人共同じ様な顔をした。
「それは本当か?」
アルス様が疑いの目を向けて来る。それも無理は無い。寧ろ可笑しいのだ。生後6ヵ月後にして魔法が使える等と前代未聞だ。
「はい、全ては嘘偽りの無い事実です。リアン様を連れてきますか?」
「ええ、取り敢えずあの子の先天属性と後天属性を確認したいわ。」
「承知致しました、では七種類の魔石もお持ち致します。」
私は席を外し、リアン様を連れてくることにした。食事の後片付けは他のメイドに任せておく。
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「連れてまいりました。」
▲▲桐矢視点▲▲
あー、大体わかったぞ。エリザさんが二人に言ったんだろう。まぁこうなる事はわかっている。どこか研究所へ連れていかれない事を祈るばかり。
「リアン、手を出して。この石に手を乗せるの。」
言われた通り、石に手を乗せた。その石は、赤く輝きだした。そして、微かに暖かい。炎の魔石だ。
「これは…後天属性ね。それじゃあ、こっちの水の魔石を。」
次は青く輝きだした。そうこう確認をしている。そして、最後の白い魔石…無の魔石だ。
「!!先天属性は無、後天属性は全属性…ペルセウス様とそっくりね…生まれ変わりなのかしら?」
「ああ、セレナ…この子はきっと神の子だ。大切に育てて行こう。エルザも良くやった。」
「有り難きお言葉でございます。」
「この事は決して公表しないように。もしも何処かの集団に攫われたりでもしたら大変だ。」
よかった…これで天才児として通るし、攫われることも無いだろう。セーフ…
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翌日、もう一度屋根裏部屋へ行く。
またもや扉が立ち塞がっていたが、サイコキネシスを使って開ける。
そして今回は無詠唱魔法について頑張る。無詠唱魔法とは、詠唱せずに即座に魔法を撃ち出す技術。詠唱時より威力は落ちるが、便利なので習得するべきだ。無詠唱でプチウィンドを唱えてみる…出来ないな…魔力を手先に込めて…脳内でイメージして撃つ。んー?出来ないなぁ?何でだろうか…
「あら?また貴方ね。」
どこからともなく声が聞こえて来た。聞いたことの無い声だ。周囲を見回すと小さい羽の生えた少女が居た。『妖精』だ。
「私は土の妖精、名前は無いわ。」
土の妖精ね…というかこの子どうやって話しかけてんの?全く口動いてないけど。
「ああ、それはテレパシーよ。妖精の特殊能力ね。無属性魔法でも使えるわ。試しに詠唱してみなさい。」
言われた通りやってみた。
「テレパシー」
頭の中に声が響いてくる。
「えーっと聞こえる?」
「うんうん、バッチリだよ。君の名前を教えてくれるかな?」
「僕はリアン・ベルクレーテ。」
「良い名前ね。ところで本題だけど、貴方一体何者?七つの属性を操り、喋れる赤ん坊…只者じゃないわね?」
「うーん、僕に言われてもね。」
「…まあ良いわ。ここで出会えたのも何かの縁、さっき無詠唱魔法をやろうとしてたでしょ?」
「うん、そうだけど?」
「無詠唱魔法はね、頭の中で念じるのじゃなくて撃ち出すイメージなのよ。詠唱魔法は作り出すっていうイメージだけど…」
「うん。」
うん、説明下手くそ。
僕は頭の中でプチウィンドを念じ、撃ち放つ。そうすると、風が吹き抜ける。
「おお、出来た。ありがとう!」
「いえいえ、おっと…私もそろそろ時間ね。私たち妖精は色々な場所にいるから良ければ話してみてね。それと、妖精と契約した属性は強くなるからいつか契約してみるといいわ。またね。」
と、消え去っていった。