#3: 物置に眠る本
それから約6ヵ月後…
よしよし…完全に身体をコントロール出来る様になってるな…ハイハイも完全に出来て、匍匐前進、座る事だって出来る。残念ながら立つことは出来ないけどね…それじゃあ散策開始だな。
まずは本を探そう。確か…二階の物置にあるってあの二人が話してたな…うおっ…意外と急な階段だな…登れるか?よっ…ほっ…疲れるけど大丈夫そうだな。
よし…到着。えっと…ここかな?というかドアノブに手が届かない…くっそ…開かないかな?
…!!階段から誰か来る?
「…お坊ちゃま、何処にいらっしゃいますかぁ~?お坊ちゃま~?」
あ、どうやらメイドさんの『エルザ』さんの様だ。髪は綺麗な薄緑の美人メイドさん。確か他にも居るんだっけ…でも基本的にこの人が俺の世話をしてくれている。母も忙しいからね。魔道士だし。
「おや、お坊ちゃま?本当にここにいらしたのですか?動ける様になってから何処へでも行けるようになったんですねぇ…おや?物置に入りたいのですか?」
察しが良い人だなぁ…と僕は頷く。エルザさんはびっくりしてた。まぁ6ヵ月後位の赤ちゃんが階段登って言葉が通じるからね。
「奥様には内緒でございますよ?」
と、しっかりと物置のドアを開けてくれた。俺はしっかりとぺこりとお辞儀をして、物置部屋に入っていった。後に残るエルザさんはぽかーんとしていた様子だった。
「お坊ちゃま…天才なのでは?」
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少し探してみると、3つの本を見つけた。
一つ目は『初級魔道書』
二つ目は『グリモワールの魔女』
三つ目は『ペルセウスとアンドロメダ』
『初級魔道書』は、普通の魔道書。恐らく初級魔法が沢山記載されているだろう。あ、でも中級は少しくらい入ってるのかな?
『グリモワールの魔女』は絵本の様だ。しかし、文字が全く理解出来ない。初級魔道書もそうだけど文字が日本語とは掛け離れてる。
最後の『ペルセウスとアンドロメダ』、これも絵本の様だ。この本は英雄ペルセウスとアンドロメダの恋を描いた絵本。ペルセウスがアンドロメダを助け出して恋に発展するラブストーリーの様だ。というかギリシャ神話と同じなのね。確かペルセウスは試練を何個も受ける話だった筈だけど…文字が読めなきゃ意味が無い。文字の勉強でもするか。正直ペルセウスとアンドロメダくらいしか分からないからな。グリモワールってのは確か魔道書だっけ。それを手に入れた魔女の話かな?ともかく、今日から文字の練習をするか。
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よし、大体分かったぞ。どうやら、少なからず規則性があるっぽいな。それにローマ字にそっくりだから覚えるのは大概苦労しなかった。取り敢えず、『初級魔道書』を読むか。
ええと…『現世ニハ魔素ガ存在スル。魔素ハ魔法ヲ発現スル力ガアル、魔力ハ、己ノ固有スル魔法ヲ使ウ為の力デアル。魔力ノ総量ハ生後ヨリ決定サレル』
なるほど、魔素は魔法を保つ空気上の力で、魔力は自身が持つ魔法を撃つための力か。それと魔力総量は生まれながらにして決まるのか。ふむふむ…
ページをぺらりと捲る。
『魔法ヲ放ツニハ手先ニ魔力ヲ集中サセ、手先ヨリ放ツベシ。魔法ハ、先天属性ト後天属性ニヨリ使用ノデキル魔法ガ異ナル。』
ふむふむ…先天属性と後天属性か…俺は何なんだろうか?全てを焼き払う灼熱の炎?全てを流し清める神聖な水?何者にも捕らわれない自由の風?それとも全てを護る大いなる土?
『属性ハ、火、水、風、地、光、闇、無デアル。火ハ最モ優秀トサレル属性デ、水モ優遇サレル。風ハ使イ所が難シイガ、使イ方次第デソノ真価ヲ発揮スル。地ハ余リ優遇サレナイガ、トテモ実用的デアル。光、闇ハ特殊デ、希少価値ノ高イ属性デアル。無ハ最モ希少性ノ高イ属性デ、先天属性ニ無ヲ持ツナラバ、魔力次第デ最モ強イ魔道士ニナルデアロウ。』
無属性が一番希少性が高い訳か。というかこの本の筆者がアレなんだよね…
本の裏側に、金色の文字で『セレナ・ベルクレーテ』と書かれている。
お母さんすげぇや。