#2: こんにちは異世界
今日、この世界に一つの生命が誕生した。
その産まれた子は父は偉大な王国騎士、母は寛容なる大魔導士。誰もがその子供に期待をしているだろう。父母共に優秀な人間であり、その子供も優秀であろう…と思ったら。
だが、その子供は変だった。
出産後、一度も泣き声を上げたことが一切無く、妙に落ち着いている。その子供の身体には異常は無い。だが、その子供は一切泣かない。そして、一切笑わない。
「名前はどうするか…?なぁ、セレナ。」
その男は異常なる子の父、『アルス・ベルクレーテ』である。その言葉への矢先は母の『セレナ・ベルクレーテ』である。両親共々美男美女であった為、その子供はとても可愛らしい顔立ちになっている。
「この子は男の子ですから…そうだ、『リアン』何ていかがでしょうか?」
「『リアン・ベルクレーテ』…いい名前だ。さあ、リアン。これが君の名前だよ。」
そう言うとその子供、『リアン』は、笑った気がした。両親は顔を見合わせて、にこやかに笑った。
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ふむ…父の名前は『アルス』…母の名前は『セレナ』か…そして家名は『ベルクレーテ』互いに人間族である。家の大きさから見るに下級貴族辺りだろうか?しかし裕福な家庭である事は間違いないだろう。そしてアルスの職業は王国騎士らしいな…取り敢えず、動けるか試してみるか…
桐矢は、赤ちゃんの『ハイハイ』をやってみる。産まれてたった2日なので、出来るはずも無いし、この赤ちゃん用のベッド?のような物からすら出れない。
う…このベッドからすら出れないじゃないか…流石に成長しないとダメか…発声は出来るのかな?
「ぅ…ぁあ…あー…よし、出来るな。」
しかし、周囲に人が居る時はやめておこう。そんな事を考えていると、母のセレナが来た。食事の時間かな?手には哺乳瓶?らしき物を持っていた。
「リアン~、ご飯でちゅよ~。」
赤ちゃん語で話し掛けてくるセレナ。そして口元に哺乳瓶らしき物を持って来る。それを咥えて、吸い始める。
んー…哺乳瓶とほとんど同じ原理か…そしてこのミルク?は何のミルクだろうか…ヤギか牛辺りのミルクで間違いないだろうが…そう言えば家で羊を飼育してんだっけ?多分羊のミルクだな。そして結構温かい。というか消毒とかしてあるんだろうか?だいたい飲み終えたらセレナが抱き寄せて、背中を優しく叩き始める。
「…けぷっ…」
少しすると、げっぷが出てきた。出てきた途端、息苦しいのが楽になった。これが赤ちゃんの気持ちか…というか赤ちゃんって毎回苦しいからげっぷを出させてるんだなぁ…
「よしよし…いいこでちゅね~。」
はたまた赤ちゃん語でセレナが話し掛け、俺の頭を優しく撫でた。そして、ベッドから出されて開放された。これで散策が出来そうだが…いや、身体が思うように動かない…これは寝たきりっぽいな…
セレナは赤ちゃん用の玩具を持って来て、俺の目の前で振る。ガラガラと同じだろうか?しかし、精神年齢18の俺にとっては正直ウザったいだけだった。
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しばらくすると、睡魔が襲ってくる…そのまま、俺は寝てしまった。にしてもこの世界の事が良くわからないから動ける様になったら色々と散策しなきゃならんな…