#19: エリクサー
家に帰って、セレナに全てを話した。
ちょっぴり怒られたが、褒められた。何にせよ無事だったから良いだと。今回取ってきた『金色の蜂蜜』はセレナに預ける事にした。因みに金色の蜂蜜は大量に入っている…それを一口でも食べれば魔力が上がるらしい…
戦闘学校行く時に少し持っていこう。
「あら~?リアン様、おかえりなさいませ~。」
「リリアさん、ただいまです。蜂蜜を大量に取ってきましたよ。ですが…巣ごと持ち帰ったのでどうすれば良いのかわかりません…」
「うーん…なら私が解体しておきますね~。私は風属性が先天属性なので~。それと蜂の子はどうしますか~?」
蜂の子は蛋白質豊富な食べ物だが…その姿からあまり食べたくないという人がしばしば…俺は食べ物は粗末にしない人だ。それに蜂の子は高級品なのだ。食べる人が少なければ市場に流すというのも良い…まぁ少しは食べる。
「食べる分だけ貰って、残りは市場辺りにでも流しましょう。」
「は~い♪では外に蜂の巣を置いてもらえますか~?」
俺とリリアさんは外へ出る。そして地面に清潔な布を敷き、その大きな蜂の巣を取り出す。
「わ~!大きいです~!これは20分くらい掛かりそうですね~…」
「え?そんな早く終わるんですか?」
「はい~♪私は一応風魔法超級の取得者ですから~♪」
風魔法超級…!?確か魔法のランクは…
『初級→中級→上級→超級→聖級→神級』という強さに分けられる。その中でも上位の超級を使えるとなると中々の実力者…
「あ、因みに私は風超級ですが、エヴァンは土超級、セレナ様に関しては火、水聖級です~♪ここのメイドはスキルだけじゃなく、実戦の強さも兼ねて選ばれたらしいです~。」
えええ…身近に強い人が沢山…エルザさんは剣士タイプか…確かにあの人強かったな…
「では、僕は失礼します。リリアさん、頑張ってください。」
「はい~♪終わったら蜂蜜を使ってスイーツをお持ちしますのでお待ち下さいね~♪」
「はい、楽しみにしてます!」
蜂蜜は砂糖よりは高級では無いがそれでも貴重な甘味で、栄養価が高い為とても重宝される。俺とて蜂蜜は好きだ。
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~セレナとアルスの部屋~
▲セレナ視点▲
…この金色の蜂蜜…預かったは良いけどどうしましょう…このまま勿体なくて使わないのが目に見えるわ…そうねぇ…少し食べてみるかしら?
ん?ドアがノックされたわね…誰かしら?
「お母様、リアンです。」
あら、リアン…何のようなのかしら?
「開いてるわ。」
「失礼します…」
リアンが部屋に入ってくる。
「えっと…金色の蜂蜜の件なのですが、少し私に頂けないでしょうか?」
「ええ、良いわよ。丁度どうするか考えてたのよ。それと…一体何に使うの?」
「実はポーションを自作してみたんです。」
「…それで?」
「そのポーションはおぞましいほど効果が強くて、それで更に効果を付与出来ないかと考えていて、最後に魔力増加の効果を付与したいのです。もしかしたらその薬で様々な命を救えるかも知れないので。」
…ッ!!この子…良い子だ…!!
我が息子ながら感激したわ。それにしても…この子には本当に驚かされるわ…単独でA下位の魔物を倒して、5歳なのに火魔法上級を扱えて、ましてや先天属性が無属性…本当に神の子ね。
「うん…良いわよ。それじゃあ…魔法で壺か瓶を作り出してくれるかしら?」
「はい、分かりました。」
リアンは頷くと掌に壺を作り出す。というか良いわねあの壺…茶色に深みがあるわ。今度何か作ってもらおうかしら?
そして、次に木を作り出す。そんな魔法あったかしら…?無属性…では無いわね。
その木を風魔法で切り裂いて壺の蓋にピッタリのサイズにする。あの子職人になるのかしら?
「出来ました。」
「ご苦労様、それじゃあ入れるわね…」
私はそーっと蜂蜜を入れる…とろーっと黄金色の蜂蜜が垂れていく…そして蜂蜜の甘い香りが鼻をくすぐる…あぁ…良いわねぇ…
壺にたっぷりと蜂蜜を入れて、さっきリアンが切った蓋をはめる。
「はい、完成よ。それと…さっきの木を作り出す魔法はいったい?」
「あ、僕が作った土魔法です。」
「作った…?私ですら5つしか作れていないのにその歳で作ったの…?」
「は、はい…そうですが?」
「…天才ね。流石私の子。」
「わぁっ!」
私はリアンに強く抱きつく。リアンは特に嫌がって居ないようだけど…
「良い?リアン、強大な力は時に敵を増やす事になるわ。あまり目立たせないようにね。それと、自分が強いからって威張って相手を見下さないように。」
「は…はい…お母…様…苦し…い…」
「あっ…ごめんなさい…」
「大丈…夫…です…ケホッ…」
あー…本当にごめんリアン。
「では…失礼します…ケホッケホッ…」
リアンが退室していく…少し寂しいわね。
…アルス…まだ帰って来ないのかしら…?
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ーー
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▲リアン視点▲
さて…この蜂蜜をポーションに混ぜてみる。
何せ蜂蜜は凄いからね。狩りを生業としている人は回復薬と蜂蜜を混ぜるとグレートな回復薬が作れるからね。きっとその原理でこっちもグレートな物が出来るはず。
黄金色の蜜をとろーっと深紅のポーションに入れて瓶を軽く振って掻き混ぜる。そうすると何故か金色に光り出した。化学反応かな?
「サーチ」
《種類:回復薬》
名称:完全回復薬
説明:体力、魔力を共に全回復させ、永続的に上昇させる。活力や精神的な面にも効果がある。
…伝説の秘薬作り出しちゃった…どうしよ…というかこれ絶対お高いよね…白金貨何枚だろ?
うーん…報告すべきか?…いや、やめておこう。これは秘密にしy---
「リアン、薬は完成し…え?」
oh…
ーーーー説
ーーー明
ーー中
ー
「なるほど…要するに伝説の秘薬を作り出して逆に困ってるのね…確かに誰かに売ったりしたらそれはとんでもない事が起きそうね。」
「はい…しかし伝説の秘薬ならばどんな難病も治せる気がして…」
「…リアン、絶対に他の人に見せちゃだめよ。」
「…はい。」
「それじゃあ、私は失礼するわね。」
「はい。」
――セレナが退出していく。
このエリクサーは取り敢えず誰にも見せないように布でカバーを作って入れておく。因みにこの布カバーは俺が作りました。
取り敢えず…5本に分けて…と…
小さめの瓶にエリクサーを分ける。少し余ったな…瓶とか無いし…そもそもわざわざ容れるような量じゃない…うーん…
「あれ?リアン君…何やってるです?」
「あ、トーク。…よし。」
トークに臨床実験しよう。
「トーク、口開けて?」
「はーい…あー…」
トークの口の中にエリクサーを垂らす…すると、トークは急に光出した。今日はよく光るな…まさか突然変異?
…光が収まると、そこに居たのはトークでは無かった…
否、トークの姿をしていなかったのだ。
「ん~…ん?リアン君?」
「あれ…?トーク?」
トークは人型…それも俺より小さい少女に変化していた。髪の毛は茶色に、そして肌色に変化して…って…服ううう!!!服着させなきゃぁ!!!
目を隠しつつ、俺はトークに俺の服を着せていく…因みにこの服はアルスがチョイスした綺麗な青のワンピースだ…男にワンピースを着せようとするなよあの父親は…まぁこうして着てもらったなら服も満足だろう。
「わぁ…これが服です?」
「うん、とっても似合ってるよ。」
「ありがと…です…」
うーん…どうしよう…何でエリクサー飲ませたら擬人化するんだろう?
「トーク、犬の姿に戻れるかい?」
「んー…」
トークはすっ と小さくなり、犬の姿へ戻る。
「戻れたです」
「それじゃあ…人型にはなれる?」
「うーん…」
そしてトークは大きくなり、また人型へ戻る。自由に変化できるんだ…便利だね。もしかして人型だと物を食べられるのかな?
「ねぇトーク、お腹空いてない?」
「…空いたです。」
そして会話を聞いていたかのようにドアが開く。
「リアン様、間食のスイーツが完成しました!って…あら?リアン様はまた女の子を連れ込んだんですか?」
「違いますよ…この子はトークです。」
「リリアさん、トークです。」
「わぁ~!可愛い!それじゃあ、皆さんも待っているので食べに行きましょう!」
「はーい!」
トークは元気の良い返事をする。というかトークは元気な女の子だったのね。声が中性的から少女に一気に変化したし…エリクサー怖い。
~リビング~
皆が座って待っている…そしてリリアさんがトークを連れてくると皆ビックリしていた。
「リリア、その子はいったい?もしかしてリアン様が連れ込んだ子ですか?」
「エルザさん、一切連れ込んでませんって…どうしてそんな噂が流れているんですか…この子はトークです。」
「そうですよ~?確かにトークちゃんです。」
「リアン君…また女の子が増えた…」
「リアン…この家の性別の比率が凄い事になってるわよ…」
確かにこの家はほとんどが女だ。男が『アルス、俺』だけ…っておかしいだろ。女には『セレナ、エルザ、リリア、エヴァン、シエル、トーク』6対2…女性は強しなのかな?
「えーっと…女性はセレナ様、エルザ、私、リリア、シエル様、トーク様。男性はアルス様。性別不明はリアン様ですね。」
「へ?」
「確かにリアン君は女の子っぽいですよね…」
「そうね…私も昔から女の子服を着せてたわ。」
「ええ、リアン様とても似合っていました。」
「うーん…確かにリアン様は中性的ですね~…というか女の子でもバレないですよ…?」
「満場一致でリアン様は女の子。」
「ちょ!?待って下さい!!まだトークが居ます!!トーク、僕は男だよね!?」
「うーん…本読んだり絵描いたり勉強してて…髪の毛が長くて…眼鏡をかけてて…くしゃみが凄く可愛くて…目が大きいから…女の子!」
「…もう良いです…」
リリアが調理場へ向かい、パンケーキを持ってこちらへやって来る。ほかほかと出てくる湯気からは甘い香りが漂ってきている。
「お待たせしました~♪今日はリアン様が取ってきてくださった蜂蜜を使った『ハニーパンケーキ』です~♪このパンケーキは生地にも蜂蜜をふんだんに使ってます~甘くて美味しいですよ~♪」
「わぁ…美味しそう…です」
「トークちゃんって人になれば食べ物食べれるのかな?」
「多分…大丈夫です。」
「それじゃあセレナ様、よろしくお願いします」
「ええ、食材に感謝を。」
セレナがそう言うと皆続けて言う…シエルとトークのパンケーキは一口サイズに切り分けてあり、俺達のはナイフとフォークで食べる。
まずはフォークを刺し、次にナイフで切る…ふわっとした生地にはナイフがすぐ通る…そして切るとふんわりと香る蜂蜜の甘い香り。
口に入れ、柔らかい生地を咀嚼すると甘い香りが口いっぱいに広がる…
「美味しい…です。」
「あら~?トークちゃんやっぱり食べれるんだね~♪ありがとう~。」
「トークちゃんは今日から『トーク・ベルクレーテ』ね。これから宜しくね。」
「はい!よろしくです!」
この家に新たな家族が迎えられた。