#17: 会話〜TALK〜
『トーク』の飼育は一応OKされた。セレナは可愛いものに弱いのだ。但し約束がある。
まず、責任をもって育てる事。
次に、粗相や危害を加えない様に躾をする。
これを前提に許可を貰った。
そしてトークと自室に戻る。トークに言葉を覚えさせて、会話がしたいからだ。
それとポーションの作製。何があるか分からないし、完成品を怪我人に上げたり無駄にはならない。まずはポーションを作っておこう。
まず基本材料の『ヒアリング草』と丸底フラスコらしきものを用意して、ヒアリング草をフラスコの中に放り込む。そのフラスコにヒアリング草が生えていた水を入れなければ枯れてしまうらしいのだが…俺はそんなもの持ってないから水魔法を使った。あ、でも枯れないわ。成功だ。
最後に、火でじっくりと煮詰め、ヒアリング草を取り出して冷ますと完成。俺は高濃度のポーションを作ってみたかったからヒアリング草と水の割合を3対2にしてある。取り敢えず煮詰めておこう。
さて、トークに言葉を教えなければならない。
そうだなぁ…まず俺の名前かな?
「トーク、僕の名前は『リアン』ほら、言って見て。」
「『ア…ン』?」
「そんな赤毛の少女の名前じゃないよ。僕は『リアン』」
今度は名前を強調して言ってみた。
「『リ…アン』?」
「そう、僕は『リアン』」
「『リアン』…」
「それじゃあ次は、君の名前だ。君の名前は『トーク』」
「『とぉく』?」
「うーん、近いけど…『トーク』、トの後にー…伸ばし…とにかく、『トーク』。復唱して。」
「『トーク』…わ…たし…は…とーく…」
急に言葉を覚えた…この子の知性どうなってんだ?生まれて数十分の知能じゃないだろ…
「そう、君はトーク。じゃあ僕の名前は?」
「『リアン』?」
「うん、正解。」
「やった…です。」
喜んだ!?この子の知性レベルはおかしい…いや、この世界の知識に適応しているのか?もしかして放置してたら色々と言葉を覚えるのかな?
「リアン…これ…なに?」
トークはポーションの醸造台の方へ近づく。
「これはポーションを作ってるんだよ。ポーションは怪我を治す薬だよ。」
「け…が?」
「うーん…怪我は自分の体に傷を負った状態かな。」
「…?」
いまいち良く分かってないようだ。それもそのうち適応するだろうか。まぁ日に日に質問に答えていけば知識も付くよね。
扉がガチャりと開いた。
「リアン君、トークちゃん居る?」
シエルがやって来た。なにやらトークを探しているのかな?というか一緒に教えれば良いかな。
「あ、シエルちゃん。ここに居るよ。」
「リアン…君?シエル…ちゃん?」
トークが違う呼び方に戸惑っているようだ。
「ああ、うーん、えっとね…僕は男だから『君』ってつけるけど、そっちに居る子…シエルは女の子だから『ちゃん』って名前の後につけるんだ。」
「…私も…リアン…君…呼ぶ?」
「うーん…呼びやすい方で良いよ。」
「じゃあ…リアン君…」
「わぁ、トークちゃんここまで喋れるようになったんだ…!」
シエルが驚いている。まぁさっき会った時は全く喋れ無かったし。
「シエル…ちゃん?」
「うん!私はシエル!よろしくね、トークちゃん!」
「よろ…しくです」
また学習した…やっぱりこの世界の知識に直接繋がっているのか…という事は魔素を取り入れれば知識が増えるのかな?
「あれ?リアン君、そのグツグツ煮詰めてるのってヒアリング草?」
「うん、ポーション作ってるんだけど…」
「へぇ…ポーションってこうやって作るんだね」
「リアン…君、これなに?」
トークは土のフィギュアの方を見ている。
「うーん、それはトークの仲間かな?トークもそれも僕が作った『魔導人形』…いや、『模造人形』だよ。」
「フィギュア…私、トーク…?」
「そう、君は僕の大切な友達だよ。」
「とも…だち…?」
「うん、友達。」
「ありがとう。」
一応当初の目的の『会話』が出来た。
これは中々の成果だと言えるだろう。
「リアン君!私は!?私は友達だよね!?」
シエルが迫真とした顔で迫ってきた。
「うん、シエルも友達だよ。」
「えへへ…ありがとう…」
シエルがニコニコしながら照れている。そしたらトークが一言放った。
「ラブラブ…です」
「何でそんな言葉知ってるの!?」
「ラブラブなんて…恥ずかしい…//」
「…知らないです。」
知識の適応力が凄まじいな。この調子だとすぐにちゃんとした会話が出来るようになるか。
ガチャッ
「リアン様、ご客人様がお見えになられました」
エルザさんが扉を開けて訪ねてきた。
「え?僕にですか?」
「はい、『魔砲銃』が完成したとの事です。」
え?完成は3日後のはずだったのだが…?
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「よう小僧、魔砲銃が完成したぞ。」
「完成は3日後のはずでは…?」
「ああ、2徹した。そのせいでもう隈が酷いぜ」
確かに濃い隈が出来ている…相当頑張ったんだろうか…
「大丈夫ですか…?」
「あぁ…何とかな…ほら、例の品だ。」
手にはなにやら特殊な形のホルスターに入った物がある。中に入っているのは『聖王の短剣』と黒色の銃身に木製のグリップのM1911だ。
「!…予想以上の出来ですね…」
「そりゃあ良い素材を沢山貰ったからな。ありゃ良い魔晶石だ。それと…ほれ、これもだ。」
もう一つのホルスターを取り出した。まさかデュアルハンドガン!?
「これは試作品の方だ。これは一回試した事あるが良い出来だったからな。これもおまけしておく。それと…魔石だ。」
全く同じものだが、短剣が無いM1911と、マガジン型の魔石が各2個ずつ、破壊の魔石と吸魔の魔石が1つ…
「ありがとうございます、えっと…名前をまだ聞いてませんでしたね。」
「俺はグリード。鍛冶屋だ。それと、魔晶石の色を言われた通り黒くしたが、それで良かったのか?」
「ええ、ロマンです。」
「そうか、ロマンか。」
「ふぅ…疲れたから俺は帰って寝る事にする、大事してくれよ?」
「はい、グリードさんありがとうございました。また機会があれば是非。」
「おう、またな。」
グリードが鍛治屋へ帰っていった。その後ろ姿は何かかっこよかった。