#16: 生命の誕生
あれから大体2時間くらい経った。
シエルはどうやら才能はかなり良い…だが、魔力の総量が常人以下という欠点を持っている。
そこさえ克服出来れば一流の魔道士になれるだろうか?何度も魔法を撃てば増える。だが、それは5歳まで…というか正確には6歳までは撃てば増える。だけど、6歳までに魔法が使える人はほんの一握り…魔力総量が桁外れた『天才』というのは5歳頃まで魔法を使っている人達だ。だから今から魔法を撃ちまくっとけばシエルも魔力総量がとても増えると思う。
「シエルちゃん、そろそろご飯だよ。」
「あ、うん。」
「ご飯食べる前にもう一回『マナグロース』を掛けとこうか?」
「うん、ありがとう!」
マナグロースを唱えてシエルの魔力を増加させ…ってお腹の減りが半端無い…ぐおおお…何か食べなければ…
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リリアさんの料理はやはりとても美味しい。今回の味付けは香料を効かせた辛めの味付けかな?シエルが顔を赤くして悶えてる…そんな辛かったのかな?
「ふぁぇぅ…辛いいい…」
「はい水。」
リリアさんがシエルに水を渡す。シエルは急いで水を飲んで辛さを抑える。少し涙目になっているが大丈夫だろうか?
「シエルちゃん、そんな辛かったかな?」
「いえ、あまり辛い物に慣れていなくて…」
あー、辛い物初めて食べるとそうなるだろうね。リリアさんとシエルが話しているとセレナが俺に話しかけてくる。
「リアン、魔導士学会のスピーチ用の原稿はどの辺まで進んでいるの?魔道士学会はあと10日後よ。」
「…一応完成はしてます…ですが中々実演方法が思い浮かばなくて…」
「魔石の魔力を無くして充填するのはいやなの?」
「何か簡単過ぎて満足感が得れないんです。やるならとことんやれとお父様に言われておりますので。」
「…エヴァン、エルザ。何か良い方法は無いかしら?」
「…私は何とも言えません…」
エヴァンは俯く。それに続いてエルザが一言。
「リアン様の魔砲銃を使えば宜しいのでは無いのでしょうか?」
「!!その方法とは?」
結局俺が一番食いついた。
「リアン様の魔砲銃は魔石の魔力を撃ち出す物でしたよね?ならばパフォーマンスみたいな感じで魔力を撃ち尽くして、その後に大道芸みたいにパッと魔力を復活させれば宜しいのでは?」
!なるほど…マジックみたいな感じか…確かにそれならば注目を集められるな…
「確かに注目は集められるわね…だけど、インチキかと思われたらどうするの?」
「その点は、リアン様が直接皆様の近くに言って見せれば宜しいかと?」
「…良い案ね。リアンはそれを出来る?」
「はい、必ずやってみせます。」
話し終わる頃に、皆は食事を食べ終えていた。
俺も少し遅れて食べ終わり、自室に戻っていった。
~PM:7:30~
…何をしよう?
算術の勉強はやり尽くして、魔術の勉強は魔道書が足りない…そして剣術はアルスがいない…
あ、そうだ!確か『生命の水』があったっけ?
あの後確か1本セレナに貰ったんだ。
えーっと…あった。これだ。
俺は収容カードから一つの瓶を取り出す。その瓶は硝子製で、気品溢れる品だ。使い終わっても何かに使えるだろうか?例えばポーションの…そうだ!ポーションだ!ポーションを作れば暇を潰せるだろうか?
今はともかく生命の水を使って『生物』を作ることに専念しよう。
まず、念入りに魔力を注入した土魔法で、頑丈な『犬』を作り、色を塗った。それはまごう事無く日本の犬だ。その姿は『チワックス』そのものだ。
チワックスとは、チワワとダックスフンドをミックスした犬種で、とても人気な犬だ。その犬を飼っていたのでつい作ってしまった。これに…生命の水を使えば…?
水を垂らした途端、モゾモゾと動き始めた…そして少し時間が経つと滑らかに動くようになっている。それはまさに生命が宿る場面だ。そして俺の顔を見たら俺に飛びかかって来た。恐らく甘えているのだろう。俺はその犬を撫でると犬はころりと俺の太股で休んでいる。大きさは犬の子供並だが、流石に土製だからそれなりに重量がある…というか痛い。
「うーん…お前はなんて名前が良いかな?」
犬は首を傾げた、一応言葉は分かるんだろうか?となれば頑張れば喋れるな…
あっ、閃いた!
「お前は『トーク』だ!いいかい?君の名前は『トーク』だ。」
「あ……り…と…う…」
喋った!?まさか言葉を学習した…?となるとかなり頭良いのかな…?ともかく今後も言葉をどんどん覚えさせて行けば名前通り『会話』が出来るだろうか…
良し、この子をセレナに飼育していいか聞いて来よう。あ、ちなみに定期的に魔力を注入すれば餌は要らないし、土魔法を使えば姿も変えられる。もしかしたら魔法も使えるかもしれない。この子の将来に期待だ。