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七色魔道士の異世界日常~Prism Wizard~  作者: 砂味のぱふぇの人
〜第一章: 幼少期〜
14/20

#14: 早い朝





翌日の朝、俺は早めに起きて朝食の準備の手伝いをしに行った。調理場へ行くと、朝早くから一人のメイドさんが料理を作っている…赤毛が特徴の可愛らしいメイドさんだ。彼女の名前は『リリン』と言い、とてもおっとりとしたメイドさんで、唯一フレンドリーに接してくれるメイドだ。


「おはようございます、リリンさん。」

「あ〜、リアン君〜♪おはよう!美味しい匂いに釣られたのかな?」

「違いますって…朝食の準備を手伝いに来ただけですよ。」

「あら〜、そうですか♪ありがとうございます〜♪それじゃあ『サルサ芋』の皮剥きと、デザート用のフルーツを切ってくださいね。」

「はい、わかりました。」

俺は中々の手つきでサルサ芋の皮剥きをする。家庭科の授業毎回ちゃんと出席してたし親の手伝いもしてた俺を舐めるなよ。


「お早いですね〜、私もこんな子供か旦那様が欲しいです。」

「リリンさんは結婚とか考えた事あります?」

「私はあまり無いですね〜、冒険者をやって、好きな様に生きて来たのであまり男の人と接点が無かったんですよね〜。」

「うーん、子供の僕が言うのもあれですが、結婚して幸せに暮らすのも良いと思いますよ。」

「あら〜、達観してますね〜。でも私は今の生活に不満を持ってませんからね〜。」

「そうですか…あ、フルーツも切り分けられましたよ。」

「ご苦労様です〜。それではもう休んでいても構いませんよ〜。ありがとうございました!」

「はい、では僕は少し外を走ってきます。」

「朝食までには帰ってきてくださいね〜♪」

俺は調理場を後にし、外へ出た。



「…結婚…ですか…。」



ーーーー

ーーー

ーー


〜1時間後〜


ふぅ、結構走ったな。そろそろ朝食も出来るだろうし、帰るか。にしても…今日は随分と霧が深いな…さ、帰ろう。


扉をガチャッと開け、中に入るとアルスが起きていた。寝起きのようで、髪がボサボサだった。

「おうリアン、今日も早いな。」

「おはようございます。お父様。」

アルスは新しく出来た洗面所へと向かう。実は、昨日地下倉庫で見つけた『潤水の器』で魔力を水に変換させ、無限に供給出来る様になっている。水の魔石をセットするだけでokという優れ物。炎の魔石で温水が出来る。水の魔石は各自一つ持っており、メイドさんたちの分は新たに買ってきた。皆満足のようだ。

「おかえりなさい、リアン君。朝食はもうすぐ出来るからね。」

「リリア、あれほど様を付けろと…申し訳ありませんリアン様、リリアが大変粗相を…」

「いえ、エルザさん顔を上げてくださいよ…これは私が頼んだ事ですから。」

「そうですよ!エルザは気にしすぎです。」

「なっ…申し訳ありません。」

「だから謝らなくとも…」

「あら、リアン様おかえりなさいませ。朝から精が出ますね。」

メイド三人組が揃った。この家は毎朝できるだけ全員で朝食を食べる事になっている。当然メイドさんたちもそうだ。

「あ、そろそろ出来上がるので私は失礼します〜。」

「あ、私も手伝うわ。」

「あら、では私も。リアン様失礼します。」

メイド三人組が調理場へ再度向かった所、セレナが起きてきた。

「お母様、おはようございます。」

「あら、リアンおはよう。ちょっと顔洗ってくるわね。」

セレナも洗面所へ向かっていく。そしてセレナとすれ違いでアルスが帰って来た。バッチリと髪の毛を整えている。


「お、良い匂いだな。流石はウチのメイド。」

確かに良い匂いが調理場から漂っている…こんな香りを嗅いでいると余計にお腹が空く。

「リリンさんはとても料理が上手ですしね。良くお父様は良いメイドさんを雇えましたよね。流石の人脈と言ったところでしょうか?」

「褒めても何も出ねぇぞ。まぁ…リリンは調理師(コック)目指してたらしいしな。」

アルスは頭を掻きながら言う。やはり褒められると後頭部辺りを掻く仕草がある。アルスと話をしているとセレナが戻ってくる。

「あら、良い匂いね。これはあのベヒモスの肉を使っているのかしら?」


朝から肉とは随分とハードな…

「えっ…あれって食えるのか?」

「中々美味らしいわよ?」

「…ベヒモスの姿形を知らなくて良かったです…」

セレナの背後からリリンがやって来た。なにやら手にはお皿を持っている…大きな肉だろうか?あれがベヒモスの肉…普通に美味しそうだ。というか松坂牛と比べても遜色が無い。

「御名答です奥方様。こちらはベヒモスの肉を『ぺパティ』というハーブで消臭し、甘辛いタレで仕上げた品です。ベヒモスの肉は高級食材とされて、中々市場に出回る事は無い食材です。」

「おおっ、旨そうだな。流石リリアだ」

「お褒めに頂き光栄で御座います。」

「それじゃあ頂きましょうか。さ、エルザもエヴァンも席について。」




「食材に感謝を。」

アルスがそう言うと、皆は続けてそう言った。これはこの村なりの頂きますの号令だそうだ。


俺はまず、サルサ芋のポテトサラダを食べてみる…。んっ…粘り気が強くて…やはりマヨネーズが無いから日本のポテトサラダとは掛け離れてるが…スッキリとした味だ。

次は切り分けられたベヒモスの肉を…ん!?旨い!肉の旨みが中に閉じ込められてて噛む度に溢れ出る。ほのかな甘みと肉の旨みがマッチして牛肉などよりも美味しいような気がする。地下倉庫に放置されてて熟成したのだろうか?深いコクも出ている。とても美味しい。

ベヒモスの肉に舌鼓を打っているとアルスが食事の手を止めて口を開く。その表情はとても真剣だ


「皆、聞いてくれ。実は…最近問題になっている『竜種(ドラゴン)』の討伐隊に俺と村長が選ばれてしまってな…それも最も危険な近衛部隊に。だからここ1~2ヵ月…ヘタをすればそれ以上帰って来れなくなる。」

「本当…!?アルスが行かずとも王国騎士団に『傲慢』が居るでしょう!?」

「今回の竜種(ドラゴン)は『凍氷竜(ブリザードドラゴン)』なんだ。先天属性が火の俺は優先的に選ばれた。それと村長も元王国騎士団で特殊討伐隊『滅竜騎士(ドラゴンスレイヤー)』だからな。すまない。」

「私からのお願い…絶対に、死なないで。」

「ああ…分かっているさ。セレナ、リアン、エルザ、エヴァン、リリアを残して俺だけ先に死ねるか。」

「…お父様、竜種(ドラゴン)とはそこまで危険な生物なのですか?」

「そうだな…お前にわかりやすいように例えてやろう。お前がこの前に戦った盗賊達が1000と束になっても倒せない。」

盗賊達が1000人…それくらいなら俺でも倒せそうだが…結構深刻何だろうな…

「…気を付けてください。お父様にはまだ剣術を教わり終えてません。」

「ああ、分かってるさ。」

「旦那様、御出発はいつなのでしょうか?」

エヴァンがアルスに問う。

「今日の夜辺りに王都から竜車が来る。その時になったら行ってくる。」

「ご回答感謝します。」

「あの…村長さんも行くんですよね?そしたら娘さんはどうするのですか?」

リリアがアルスに問う。

「シエルか、シエルはここに泊まりに来る。しっかりと世話をしてやるんだぞ。」

「はい、わかりました。ありがとうございます。」

「私も質問良いですか?」

エルザが手を挙げる。

「ああ。」

「今回の竜種討伐、私も同行出来ませんか?」

「…やめておいてくれ。流石にお前を危険に晒すわけにはいかないからな。」

「…申し訳御座いません。」


しばらくの間沈黙が訪れてしまった…一番最初に口を開いたのはセレナだった。

「折角リリアが作ってくれた美味しい料理が台無しになるわ。この暗いムード吹き飛ばして元気に頂きましょう!」

今回の件で最も心配をしているセレナだが、アルスに心配を掛けないように明るく振る舞う…だが、その表情は少し暗く見えた。


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