#10: 魔法具と魔道士学会
翌日、早朝から起きて運動をある程度する。その後、アルスとセレナが起きてきた頃に俺は設計図を持って二人の方へ走って行った。
「お母様、お父様、武器の設計図が出来たのですが理論的には大丈夫でしょうか?」
と俺は羊皮紙を広げてみせる。アルスは首を傾げ、セレナは興味深そうに眺めている…
「リアン?これは一体何の武器だい?」
アルスはやはり良く分かっていないようだ。というかアルスは頭が悪いのかも知れない…
「えっと、魔力を撃ち出す武器です。」
「魔力を撃ち出す…?」
アルスはより一層として悩んでいるが、それを脇目にセレナは口を開いた。
「リアン、良く出来ている武器だと思うわ、だけど材料的にも魔力的にも扱うのは難しいんじゃないかしら?」
そうだ、セレナは俺の魔力総量を知らないようだ。正直俺も計測した事は無いが、水の中級魔法『聖潤』という擬似的な雨を作り出す魔法を継続して24時間余裕で出せた。翌日見てみたら川は大洪水していた。
「魔力総量は大丈夫です。ですが、材料はどうすれば良いのか分からないのでお母様とお父様に相談しに来たんです。」
「あ、そうだ。」
何かを思い出したようにアルスは口を開いた。
「実はセレナも知らないだろうが、この家の下に地下倉庫があるんだ。そこに冒険者時代に集めた素材を貯めてある。多分材料はそこにあるヤツで足りるだろう。」
衝撃の事実、セレナもビックリしていた。やはりセレナにも話していなかったようである。
「本当ですか!?」
「ああ、そこにあるのを使いなさい。」
「お父様、ありがとうございます!大好きです!」
甘え半分にアルスに抱きつく。アルスは嬉しそうだった。息子兼、娘に抱きつかれているのだから。そしてセレナは呆れたような顔をしている。
「リアン、この武器は『魔法具』として指定されると思うわ。肌身離さないようにしなさい。」
「はい。」
「なぁ、リアン…一応聞いておくが魔石の魔力が尽きたらどうするんだ?また買い換えたりするのか?」
アルスは疑問を持っている。確かに、魔石の魔力は尽きたら普通の石に戻る。だが、最近見つけた仕組みを使えば大丈夫だ。
「実は、最近分かったのですが魔石は魔力が完全に尽きる前に魔力を注入すれば再度使えるんです。」
「!!それは本当なの!?」
一番に食いついてきたのはセレナだった。
「はい、本当ですが…」
「どうしたんだセレナ、そんなに大声出して…」
「実は魔道騎士団の方では魔石の枯渇が問題でね、それを解決する案は無いかって私に手紙が届いて来たのよ。」
そういえばセレナは元魔道騎士団の副団長だったんだよな。しかし引退した者に縋るとは何事か。
「ともあれリアン。これは大発見よ。リアンが良いならば魔道士学会に出てみないかしら?」
「魔道士学会…?何ですかそれは?」
聞いた事の無い単語が出てきた。
「ああ、あの長ったらしい演説会か。途中で寝ちまったよ。」
「まぁ…それは心外ね。でも騎士団には関係無いかしら。魔道士学会はいたる国の魔道士が集まって、新たな研究や発見を発表する場よ。そこでリアンの発見を公表すれば、大発見でしょうね。あらゆる魔道士ギルドから技術の売買を頼まれるんじゃないかしら?」
ほう、だが…そんな事を公表するだけで大発見なんてね…そんな事言ったら沢山魔力の応用が効きそうだけど。
「それで…出てみる気はある?リアン。」
「…はい。出ます。」
「決まりね。じゃあ今日辺りから発表用原稿を書かなければいけないわね。今日はこの魔法具の作成で忙しいだろうし、明日からでも構わないわ。とりあえず、地下倉庫とやらに行きましょうか。」
俺達はアルスの案内で地下倉庫へ向かっていった…