TSSS ~多重存在~ 1章
TSSSの一章です。
ある意味プロローグ以上に話が進まなかった気もしますが、2章でぐっと動く予定なのでよろしくお願いいたします。
振り返った彼女は・・・
結論から言うと、植物と心を通わせる少女ではなかった。
じゃなくて、小学校時代の、クラスメートだった。
「・・・天城?」
つぶやくと、小学校の時と印象の変わらない元クラスメート、天城奏美は少し驚いたような顔をして、それから屈託のない笑顔を浮かべた。
「名前、憶えててくれたんだっ。久しぶりっ、玲次・・・、あえと、天乃谷っ」
「あ、ああ、久しぶり」
うーん...なんだろう・・・。
一応話し方に緊張の色は見えるものの、物理的に距離が近い・・・。
しかも名前呼び捨てかよ。
小学校で、そんなに仲良かった記憶もないんだけどな。
(っていうか、何でこいつがここに?)
そう思ったが、いきなりそんなことを聞くのも失礼かもしれないと思い、とりあえず無難な質問をしてみる。
「えーと・・・こんなとこで何してんの?」
「え?ああ・・・ちょっとここの景色、綺麗だなー・・・って・・・」
ほーう、なかなか分かってんじゃん。
ってあれ? よく見ると、こいつが着てんの、うちの制服か?
「あ、うん。れい・・・あ、いや、天乃谷と同じ学校に通うことになったんだけどさ」
通うことになって、か。そこそこ受験勉強しないと来れる学校じゃないけどな?
頭よかったかな? 小学校時代にそんなイメージもなかったけど。
「だから、学校、一緒に行かない?」
「え?ああ、まあ、いいけど」
言われて、戸惑いつつそう返す。
しかし・・・こいつ家この辺?小学校時代、登校中とか会った記憶ないけどな。
てか何も覚えてないな俺。小学校時代。
しかし天城が俺の返事を聞くなり歩き始めてしまったため、俺は釈然としないながらも思考を無理矢理中断して、とりあえずついていくことにした。
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道中、聞いたところによれば、彼女の家は俺の家の大分近く。
なんというか、これまで朝会った記憶がないのが不思議なくらいの近さと位置だった。
そうやって話をしているうちに二人は学校に到着した。
「しかし、ずいぶん早く着いちゃったね。どうしようか・・・そうだっ、れ・・・、天乃谷。中学もここなんだよね。入学式まで暇だし、学校案内とかしてくれない?」
「お、おう・・・まあ、いいけど」
なんというか、すごいぐいぐいくるな・・・。
ただその割に噛み噛みなんだけどな。
そんなこんなで、多大な違和感を覚えながらもとりあえず案内してやった。
「えーとそれでここが、高1の教室なのかな。あとなんか見たいものとかあるか?」
「んー・・・、まあ特にはないかなー。というか、もうそろそろ式が始まる時間じゃないかなあ?」
「え・・・?...ってうわっ!?」
見れば入学式開始の5分前。やっば・・・。いつの間に。
ギリギリはまずいなー。・・・まあ、仕方ないか。
「急ぐぞ、天城!」
「へっ!?あっ、ま、待ってぇ・・・」
待ってられるか。と、そういう訳で、いつのまにか大分落ち着いて話せるようになった彼女の手を引いて、
入学式が行われる体育館へ走る俺だった。
あの後、俺らは慌てて指定された席に着いた。あいつはなんか怒っていたみたいだったが、すぐ別れたので理由は聞けていない。
入学式での校長やら新入生代表やらのテンプレートな挨拶は右から左に通り抜け、気が付けば入学式は終了。手に残ったのは1冊の書類だった。
なんだっけこれ・・・あ、そうか。
そういえば入学式開始直前に配られていた。クラス分け等の載った書類だ。
中を見ると、最初のページには、校長の顔がデカデカと載っていた。
いや、いらねえ。
更にページをめくると、そこにはクラス分けが。
えーと…俺の名前は、と・・・。
名前はすぐに見つかった。一番初め、Aクラスだったからだ。
そのさらに後ろのページに乗っていた解説によれば、この高校のクラス分けは成績順になるのだとか。
面倒な説明はさておいて、簡単に言うと、俺は内部生の男子の中で100人中上位10人以内に入ったということになる。
まあ、誰に宛てるでもない自慢はこの辺にしておいて、クラスメートとなる文字列を眺めつつ、教室へ向かう。
知り合いの名前をいくつか見つけつつ、下へ向かった視線の先・・・。
そこに予想していなかった名前を見つけ、思わず目をこすって二度見してしまった。
やはりそうだ、真ん中、少し下あたりに「天城湊美」とある。
ってことは、あいつは女子外部生100人中上位10人ってことか。
意外だな・・・失礼だけど入学だって意外だったのに。
いや、もう今日こればっかだし、あいつに対するイメージは一掃した方がいいのかも。
小学校なんてあてにならないということだろう。
廊下を渡って教室に入り、座席表に書かれた場所に座り、ふう~と息を吐く。
教室を見回すと、そこには天城の姿があった。
それぞれ交流している周りの生徒とはあまり話さずに、黙ってちょこんと椅子に座っている。
案外、人付き合いが苦手なのかも。
声をかけに行こうか。でもこっちから行くのも何か癪だし。
それにあの女子集団の中を突っ切っていくのもなかなか勇気がいるしな・・・。
なんて迷っていると、雑談の間が重なったのか一瞬教室が静かになる。
そして、それとほぼ同時に、教室の前の扉から担任と思わしき人物が入室してきた。
途端に、再び教室内がざわつき始める。
その理由は、担任と思しきその教師の外見にあった。
この学校においてこのAクラスはトップ。そのため、このクラスの担任は学年主任も兼任することになる。
そのためAクラスにおいてはベテランの教師が担任にあたることが多いのだが、
今教室に入ってきた教師は外見で言うと20代にも見えるほどの若い、しかも女教師だったのだ。
いや、女教師はそこには関係ないんだけど。
先生が教壇に立つと、妙な威圧感によってざわついていた教室は水を打ったように静まり返った。
そんな中で、先生は凛としたよく通る声で話し始める。
「Aクラス担任、及び高校1年の学年主任、北見涼子だ」
少しざわついた教室全体を手を上げて制すと、北見先生は凛とした態度でHRを取り仕切っていく。
(へー・・・若そうなのに威圧感のある先生だなあ・・・)
小声でつぶやくと先生がちらっとこちらを見て得意げに笑った・・・ような気がした。
と、そんなことを思っていたら、
「では、今日はこれで解散だ。各自気をてゅけて・・・ゴホッゴホッ・・・。
き、気を付けて帰るように。わ、笑うんじゃない!」
・・・なんというか、台無しだった。
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さて、せっかく早く帰れるんだし、急いで帰って小説でも読もうか。
教室の前の方できょろきょろしている天城を尻目に見つつ、教室をあとにする。
何やってんだ?あいつ。
気にはなったが、まあいいか。人見知り(疑惑)は放っておこう。
一貫校とはいえ今朝のあれからして性格的には問題なくすぐに友達できるだろうしな。
まあそれにあのクラスも半分は外部生なわけだし。
って、何で俺があいつの高校デビューの心配してんだよ・・・。
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新生活に浮かれながら、新たな人間関係の中ではしゃぐ生徒たち。
その光景を眺めながら、どこか切羽詰まったような表情で、玲次を見据える女教師がいた。
「さて、入学試験と行こうか。 天乃谷玲次・・・」




