表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

TSSS 8章 (上)

ダシの出しすぎ。味がえぐくなります。

「うぐっ、ま、不味い・・・おえぇ…」


奥にキッチンルームがあったのでひとまず夕食づくりにチャレンジしたものの、雑炊すらもひどい出来だ。


何が原因かわからないが、なんというか、味がえぐい。言葉では言い表せない不味さだ。


こんなものを病人に食べさせるわけにはいかない。しかしもう6時になる。あまり試行錯誤している時間もない。


しかし残念ながら天城の家は門限に厳しいらしいし、先生も体育祭が近く忙しいそうだ。


こんな時頼れるのは・・・うん、それしかない。


この間天城(銀髪)の写真などはこの部屋にも一枚もないと言っていたし、大丈夫だろう。


先生曰くここの研究員が入ったこともあるそうだ。そこからも、片方しかいなければ危険はないのだろう。


俺は携帯を起動させて、ある人を呼んだ。



---



「ちょ、この建物怪しすぎ・・・マフィアのアジトみたいな感じ・・・」

「何だ怖いのか?」

「そんなわけないでしょうが!何歳だと思って・・・ひゃぁっ!?」

「あ、そこ気を付けろよ」

「先に言えやっ!」


と言う訳で、久々の登場。妹の由香です。2人合わせて天乃谷兄弟です~ど~も~。


「んで、ここにその病気の子がいるのね?」

「そう。ただ俺には看病とかだいぶきつい・・・というか飯とか作れないんで、頼むわ・・・」

「まあいいけど・・・ってドア多いわ・・・なにここ秘密基地?」

「んなわけあるかい・・・まあ、諸事情ありましてですね・・・」

「ほんともう・・・まあ友達の家に泊まるって言ってきたからいいけど・・・」

「え、何どこに泊まるのお前?」

「え、そういう話じゃないの?」

「「・・・え?」」


…どうやら、致命的な勘違いがあったようだ。



---



「ぅん・・・あれ?天乃谷?なんでいるの?」

「看病に来たんだよ。覚えてない?」

「う、うん・・・覚えてない…かも」

「いま妹に飯作ってもらってる。食べられそう?」

「あ、うん。熱下がったのかな・・・。少しお腹すいてきたかも。いい匂い・・・」

「妹の作る飯は上手いから安心していいぞ。俺が保証する」


目を覚ました天城に断言していると、由香が大きな鍋を抱えて出てきて、食卓にどんと置いた。


「なんでお兄ちゃんがドヤ顔で私の自慢してんの・・・意味わかんないし」


呆れ顔でそう言う由香に微妙な笑みを送ってから、天城に向き直る。


「大丈夫?立てる?」

「うん、大丈夫・・・。妹さんまで来てもらって、ほんとごめん、ありがとね」

「大丈夫大丈夫、どうせこいつ暇だから」

「おいそこの兄貴ちょっとツラ貸せや」

「息ぴったりだね・・・なんか羨ましいや」


いつもの元気いっぱいな天城は影を潜め、やはりどこか元気がない天城。


心配だけど・・・


「とりあえず食おう!由香ー早くー早くー」

「子供か!自分で勝手に食え!」


3人いると雰囲気も明るくなって、いいもんだな。3人寄ればなんとやら・・・って、それは違うけどな。





「美味い。流石我が妹。もう嫁にしたい」

「何言ってんのマジで・・・」

「あはは、なんかいつもとキャラ違うね玲次」


アットホームな雰囲気に当てられたか、天城の前だというのにいつの間にか素になっていた。


「はは・・・家ではだいたいこんな感じなんだよな。どうも外だとかっこつけちゃってダメだわ」

「えー?学校ではどんな感じなんですか?兄って」


尋ねた由香に口に指を当てて考えながら、天城も返す。


「うーん・・・なんというか、ちょっとクールな感じ?かな」

「あーでも家でもそういう時あるー!なんか勘違いしちゃってる感じのクールぶった態度とかww」

「ちょ・・・ひでえ・・・。流石に凹むよ俺」



時刻は8時前くらい。談笑していると、由香が「トランプかUNOやろうよ!」なんて言い出した。


多分修学旅行みたいな気分で浮かれているんだろう。天城も、両方あるよーなんて言って引き出しからカードの束を取り出す。


「まあいいけど、イカサマすんなよー由香」

「し、しないっての!昔のこといつまでも言わないでよ!」

「昔のこと?」


首をかしげる天城。


「ああ、こいつ昔大富豪のカード自分だけ超強くして圧勝したことあるんだよ。ジョーカー2枚、2が4枚みたいなね」

「それはバレるねwでもかわいーじゃんそれ」

「や、やめてくださいよー、天城さんまで・・・」


俺は苦笑しながら、笑う天城を見る。いつもの快活な笑顔が戻り、何より楽しそうだ。由香を連れてきて正解だったかな。


俺はいくらか安心しながら、配られたカードを手に取った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ