鷹の眼
俺の名前は夜鷹爪牙だ。生き物をこよなく愛する20歳だ。
そんなこんなで平日の昼間っから大好きな動物園にきて趣味の動物観察としゃれこんでいる。
え、つれはいるのかって?見た目ふつう、性格人見知り、趣味動物観察、加えて理系で交友関係は狭い。さて、この状況で連れがいるとお思いですか?
まぁ、多くの人が察してくれたであろうところで現実に帰ってこよう。
今俺の目の前には鷹がいる。鷹。TAKA。わかるか?鷹ですよ。
鋭い眼光にシャープなフォルム。それになんといっても気品すら感じる優美な高速飛行。
かっこよすぎだろ。
とまぁチープな言葉しか並べられないが鷹に対する情熱は感じてもらえただろう。
ただ、今日が平日だからなのかこの檻の前には人が俺しかいない。
(みんな鷹の素晴らしさがわかっていないのか?!)
わずかに憤りを感じるが、静かに対面できるから良しとしよう。
じーっと鷹を見つめる。
鷹もこちらに気づいたのかこちらの目を見返してきた。
(おぉ、目が合うとは珍しいな!)
内心狂喜乱舞しながら見つめ返す。
(鷹が目をそらすまで絶対目をそらさないぜ!)
そう意気込み、じっと見つめ続けた。
気が付くと日が傾き始めていた。かれこれ3時間ほど見つめていたらしい。
鷹はいまだにこちらをじっと見ている。
(尋常じゃない忍耐力だぞこいつ。それに付き合っていた俺も俺なんだが。)
しかし、そろそろ帰らなければならない時間帯になりつつある。なんせ、まだ、明日までのレポートも仕上がっていないからな。
名残惜しさを感じつつも帰る決心を固めた。
「じゃあ、またな」
そう言って振り返った。
ズシャァァァ
目の前が赤く染まる。
間欠泉が湧き出すように赤い液体が宙を舞っていた。
視界に移るのは黒いローブの男。顔は見えない。そいつの右手には赤く染まったナイフが握られていた。
首筋に引き裂かれるような痛みを感じた。
(首をきられたのか・・・)
明確に己の死を感じたせいかひどく冷静にそう考える。遅れて周囲から悲鳴が上がる。
ドサッ!
血とともに力がぬけ立っていられなくなる。
黒ローブも逃げずにこちらを見つめ、じっと立っている。
そこにわずかにひっかかりを感じるが思考すらもままならなくなってきた。
(最期の光景がこれはいやだな・・・)
そう思い、鷹の方に視線を向けた。
暗くなっていく視界に最後に移されていたのは怪しく光る鷹の眼だった。