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ずんどこハム野郎! ~サン●ードーム~

 さらに30分後、スライムの村。

 ネズミたちはその異常な脚力でスライムの村に辿り着いた。


 だがそんなことはつゆ知らず、レオはスライムの村で美女たちに囲まれていた。


「お役人さまー」


「おやくにんさまー」


「お役人様」


 なぜか彼女たちはレオにひっついてくる。


「くんくん……お役人さまからいいニオイがする……」


 なぜかニオイをくんかくんかとニオイをかいでくるのだ。


「さ、さすがレオ様……優秀なオスにはメスが群がるということか! くんかくんか」


 女性を徹底的にモノ扱いする文化圏からやって来たド変態が発情する。

 その目はハートマークが浮かんでいるかのようである。

 そしてもう一人は……


(みんなが群がっているとなぜか胸がぞわぞわする……変なもの食べたかなあ?)


 と見当違いのことを考えていた。


 そしてその時だった。


 ドンドコドコドコ。

 ドンドコドコドコ。


 太鼓の音が聞こえてくる。


「ヒャッハー! 皆殺しだー!」


 モヒカンのネズミが叫び、戦闘用のネズミたちが村を取り囲む。

 そしてジャイアントラットの偉大なる王、ベルルスコーニが現れた。

 鉄仮面で顔を隠したベルルスコーニは慣れた様子でスピーチを始める。


「我々はこの一階層を支配する最強種族ジャイアントラットである」


「はい?」


 レオはあまりの急展開に鼻水を垂らした。


「我が名はベルルスコーニ。偉大なるジャイアントラットの王である!」


「ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ!」


 ジャイアントラットたちが王の名を叫ぶ。


「貴様らは劣等種。ゆえに貴様らは滅亡しなければならない!」


「ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ!」


「愚かな劣等種よ! 我が前にひざまずけ! さすれば苦しまずに殺してくれよう!」


「ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ! ベルルスコーニ!」


「ぐはっはっはっはっは! 愚かな劣等種どもよ! 泣き叫べ! そして許しを請え! 行けい、モヒカン軍団よ!」


「ヒャッハー!!!」


 こうしてレオを遙か遠くに置いてきぼりにしながら戦闘が始まったのである。


「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 釘バットを器用に持ったネズミがレオに襲いかかる。

 さすがにここまでコケにされて怒らないほどにはレオは人間ができていない。


「精霊格斗術『狂おしいほど蒼く荒れる海』」


 精霊により強化された拳の連打が釘バットネズミに襲いかかる。

 物理耐性のある磯矢を打ち倒した暴力の嵐。

 全身から嫌な音を立てながらネズミは壁まで吹っ飛ぶ。


「な、なにい! 貴様ぁッ、劣等種のくせに!」


「あ? 劣等種がなんだって?」


 そう言うとレオは殺気をみなぎらせる。


「ひいいいいっ!」


 たったそれだけで数匹のジャイアントラットが恐怖の余り気絶する。

 所詮ネズミである。


「レオ様の殺気しゅごーい♪ おかしくなっちゃうー♪」


 一方、レベルの高い元モンスターはその殺気を最大限楽しんでいた。

 ド変態である。


 ところがネズミの王であるベルルスコーニは恐怖を感じていた。

 今までに見たことのない凶暴性。

 容赦のなさ。

 そして圧倒的戦闘力。

 自分たちジャイアントラットよりも優れた生き物がいたのだ。

 だがそれを認めることは許されない。

 ダンジョン内最優秀種族。

 その優越感だけで団結していたのがジャイアンラットたちなのだ。


「か、かかれ我が兄弟たちよ!」


 ジャイアントラットたちがレオ目がけて突進した。


「磯矢! ネズミと戦え! 林はウィンデーネ全員で援護しろ」


「は!」


「おーけー!」


 レオは拳でネズミを叩き落とし、磯矢は斧でネズミを撃退していく。

 林たちは圧縮された水を打出しネズミを殲滅していく。

 それは圧倒的な暴力。

 ジャイアントラットが味わったこともない圧倒的な暴力の嵐だった。


「ぐぎゃああああああああ!」


「ぶべらああああああああ!」


 強烈な一撃で吹き飛び壁を突き破るネズミ。

 ジャイアントラットの目ですら捕捉出来ないほどの速さで繰り出される拳によるコンビネーション。

 ジャイアントラットは全身の骨を砕かれ、ゴミのように打ち捨てられていく。

 斧の餌食になったジャイアントラットはもっと酷い有様である。


「なぜだ! なぜ我が軍団がこうも易々と破れるのだ!!!」


 鉄仮面をつけたベルルスコーニが叫ぶ。


「だってネズミだろ……」


 レオの冷静なツッコミにベルルスコーニが鉄仮面奥にある目を血走らせる。


「貴様ぁ! 我らを愚弄するか! ええい! 我が出撃する!」


 そう怒鳴るとベルルスコーニが前線に出たのである。

 標的はレオ。

 ベルルスコーニはその王としての経験から一番偉いヤツを探り当てたのである。


「くくくく。貴様はもう終わりだ。このジャイアントラットの王ベルルスコーニ様がやってきたのだからな!」


 ベルルスコーニは構える。

 それは異様な構えだった。

 ネズミなのに猫足立ち。

 後ろ9割、前1割の立ち方である。

 もしかすると中国武術の虚歩なのかもしれない。


「ふおおおおおおおお!」


 呼吸法。

 そして……


「喰らえ! 巨大鼠(ジャイアントラット)流……げぶらッ!」


 最後まで言わせない。

 レオはバカの戯れ言に付き合ってる暇はないのだ。

 そのまま無言で容赦のないラッシュを浴びせる。


「げびゅらげびゅげびゅ!」


 凄まじいラッシュでベルルスコーニは宙に浮いた状態で拳を浴びせられる。

 そしてレオは最後に渾身のストレートをぶち込む。


「げびゅあああああああああああああッ!」


 クルクル回りながらベルルスコーニは壁を突き破る。

 それでも勢いは止まらない。

 何枚もの壁を突き破る。

 その飛行距離は100メートル以上。

 原形を留めていたのが不思議なほどである。


「ひいいいいいい! 王が倒された!」


 ジャイアントラットたちが恐慌をきたした。

 絶対的な強者であった王が倒されようやく彼らは理解したのだ。

 ジャイアントラットはダンジョン内最優秀種族なのではなかったのだ。

 本当はただの狩られる側の下等生物だったのだ。

 我先にと逃げ出すジャイアントラット。

 だがそれは甘かった。

 彼らが逃げる先に林率いるウィンデーネ軍団と磯矢が先回りしていたのだ。


「レオ様に弓引いた貴様らを逃がすとでも思ったのか?」


 磯矢は冷たく笑うと斧を振り回す。


「みんな! 悪いやつをやっつけるよ!」


「おー!」


 林に先導されたウィンデーネたちもノリノリで魔力を溜める。

 前には軍勢が、後ろには王を倒した化け物が迫る。

 すでにジャイアントラットたちに逃げ場はなかった。


「ひ、ひいいいいいいい!」


「行くぞ!」


 磯矢が斧を振りかぶりネズミの群れへと突っ込んでいく。

 ジャイアンとラットが鞠のように飛ばされていく。


「行くよー! 『荒ぶる流氷!』」


 ウィンデーネたちは床に魔法をかけと床や壁が凍っていく。

 そしてジャイアントラットたちの足も凍り付く。


「ひ、ひいいいいい!」


「お仕置きの時間だな」


 磯矢がにやりと笑う。


「ぎゃあああああああああああああ!」


 そしてジャイアントラットの悲鳴が迷宮に木霊した。


 ジャイアントラット・ベルルスコーニ派はここに滅亡した。

 スライムの村改めウィンデーネの村、レオによって征服。

 それが140年にも及ぶ戦いで人類が1階の大半を制圧するという快挙を成し遂げた瞬間であった。

 ちなみにジャイアントラットの生き残りは全員捕縛し村へ派遣された兵に引き渡された。

 実験動物としての余生を過ごすことになるという。

 極端に寿命が短く世代交代も激しいジャイアントラットたちは、数年も経てばかつてダンジョン征服を目論んだことなど忘却の彼方になると予想されている。

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