↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン兄貴 ~人型理不尽がダンジョンを蹂躙する話~  作者: 藤原ゴンザレス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/27

ジャイアントラット

 レオたちはダンジョン前の検問所に入る。

 パスを提示して有刺鉄線が張り巡らされた門からダンジョンへ入る。

 今回は一階層の探索である。


 レオは携帯型端末で歴史のファイルを読んでいた。


 精霊二人が三日間でネットで下調べをしたところ、レオが元いた世界とは歴史にかなりの相違があることに気がついた。

 上野戦争が起こったのが1868年。

 それ以来、新政府と幕府軍の内戦は継続している。

 それ以外は日清、日露戦争の流れはほぼ同じ。

 元いた世界と同じように太平洋戦争も起こったが、戦争状態に入った一ヶ月後にアメリカでも魔道士が地獄の門を開き南軍が復活、アメリカはモンスターとの戦闘状態に突入した。

 同じくヨーロッパ戦線でも地獄の門が開きモンゴル軍が復活。

 アンデッドを主力とするモンゴル軍はポーランドそしてドイツに進行。

 ワールシュタットの戦いの再現となり両国はモンスターの軍勢によって滅ぼされてしまった。

 敵は人間からモンスターへと移行。

 早期講和が実現した。

 人間と争っている余裕がなくなったのである。

 そして同時期にアジア全域やアフリカ、中東でも地獄の門が開く。

 全人類はモンスターとの戦闘状態に入った。

 人類はモンスターとの戦いを第三次世界大戦と位置づけ、現在もその戦争は継続されている。

 と、いうのが「歴史まとめ」である。


(うん。よくわからん)


 暗記科目が苦手なレオは「とりあえず人類はモンスターと戦ってるよ」と解釈した。

 そして次の資料である。


 地球で一番凶暴な生物である人類が、なぜモンスターを絶滅させなかったのか?

 答えは銃弾が通じないモンスターが数多く存在するからである。

 これはゲームと同じだとレオは理解した。

 磯矢みたいに物理耐性があるモンスターが多数いるという事である。

 そのせいでどこの国も数十年かけても広大なダンジョンを攻略できていないとのことだ。

 日本以外ではダンジョンの外にもモンスターがあふれている状態にある。


 日本は上野戦争直後から異能者を集め寛永寺周辺を封鎖、そして早い段階から若い異能者をダンジョンの中で訓練してきた。

 この分野の先進国である。

 アーティファクトの解析を基に様々な魔術製品を開発、世界中に輸出している。

 ダンジョン探索は国の基幹産業を支えているのである。


 つまり残念な知能を持つレオの


「入り口から大量のコンクリート流し込んで埋めちゃえばいいんじゃね?」


 という案は許されないのである。

 という所まではレオは理解できた。


 ここ70年は、3階で膠着状態が続いている。

 磯矢が階層を問わずゲリラ的に暴れ回ったせいでもあるが、根本的な原因は強力な力を持つ異能者の不足。

 三階を守るための頭数は確保できるが攻略をする決定力は存在しない。

 異能者の数は揃えど皆小粒な能力者ということだ。

 ゆえに学生は基本的に主に1、2階の探索、それも安全圏を探索するのが主な仕事である。

 卒業後は軍に入隊するかフリーの探索者になる。

 磯矢の情報ではフリーの探索者は4階よりも下の階層まで潜るものもいるとの事である。

 林の使ったような抜け道がいくつも存在するのだろうとレオは予測している。


「なるほど。要するに武闘派の特攻隊長がいないから支配地域は増えないと。そして族上がりは就職に困るということだな」


「生まれてからこれほど頭の悪そうな発言を聞いたことがないぞ……」


 とうとうレオは林にツッコミを入れられる。


「酷い! お菓子あげようと思ったけどナシね!」


「しょ、しょんなー!」


 そんな二人を見て磯矢が首をかしげた。


(はて……? ご主人様からいいニオイがする。なんだろうか? そう言えば林の裏切りを見た後、急にイライラしてきて正気を失ってしまった。なんだろうかこの甘いニオイは……? はあはあ。くんかくんか)


 実はこれはレオの特異体質なのだが、まだこのときは磯矢以外誰も気づいていなかった。



 レオは安全圏の探索をするつもりなどなかった。

 人に踏み荒らされた土地よりも危険地帯の方が儲けが多い。

 幸いなことにダンジョンに住んでいた仲間が二人もいる。

 他の探索者より大分有利なはず、今のうちに稼いで稼いで稼ぎまくってやろうと思っているのだ。


 精霊二人の証言によると、地下一階から三階はスライムやゴブリンの町人が住む町がある。

 彼らは人間と言葉が通じないためゲリラ化して探索者を襲っているらしい。

 一階層が人間に占領されたのは今から100年ほど前、あまりにも昔すぎて林も磯矢も一階層の町には行ったことがないとのことである。

 今回の目的は林が持っていた古い地図にある一番近いスライムの町の存否の確認である。


「ここより先が地図のない地帯のようだな」


 軍の施設から二時間ほど歩くと携帯型端末の地図に『未登録』の表示が現れた。

 距離にして3キロほどであるが入り組んだ迷宮を探索するとなると時間はいくらあっても足りない。

 それはまるで測量しながら進んでいるかのようだった。

 端末は20年ほど前に開発されたものなので、ここ20年はマップに登録されていない地域ということになる。

 レオは端末の『マッピングモード』ボタンを押す。

 ここからの探索には報酬が発生するのだ。


「ご主人様。用心召されい。スライムの民兵がいるやもしれませぬ」


 そう言うと磯矢は巨大な斧を覆う布を外してから肩に担いだ。

 剥き出しの斧がダンジョンの照明にあたり光った。


「いや大丈夫だろ」


 レオはにやりと笑った。

 なぜスライムの集落を最初にしたのか。

 それは攻略法があるからである。


「ぐははは! 今日、今から俺は知将と呼ばれるようになる!」


「凄いです! 凄いですレオ様!」


「すごいのかー?」


 磯矢が『ご主人様』から『レオ様』に呼び名を変え、林はよくわからずに賛同した。

 だがレオはその時頭から抜け落ちていた。

 そこはダンジョンであり、危険生物がウロウロしていることを。


 一行がしばらく進むと足音が聞こえてくる。

 ぽよんぽよんぽよん。

 それは聞いたことがある音だった。


「林。こりゃスライムが近づいてる音じゃないか?」


「おそらく」


「磯矢は俺と警戒。林は後衛でなにかあったらサポート」


「あいわかった」


 レオは一応警戒態勢を敷く。

 スライムは全て林のような気性らしいが、それでも用心に越したことはない。


「これが終わったら……レオ様に踏みつけてもらうんだ……」


「嫌な死亡フラグを立てるな! つか絶対にそんなことしないからな!」


 ぽよんぽよんぽよん。

 スライムの跳ねる音。

 どうやら複数のようだ。

 そして叫び声。


「うわあああああああん! 助けてー!」


 入り組んだダンジョンの壁。

 その曲がり角から三体のスライムが飛び出してきた。

 スライムたちは林を見るとひれ伏した。

 どうやら同族だとわかったようだ。


「精霊様。獣に追われております。どうかお助けください!」


 ひれ伏すスライムたちの来た方向から大きな足音が聞こえてくる。

 そしてヤツは現れた。

 人間ほどの大きさに小動物のスピードを兼ね備えた獣。

 それは巨大なネズミだった。


巨大鼠(ジャイアントラット)か。まだ駆除しきれてなかったか!」


 磯矢が斧を構え斬りかかる。

 だがジャイアントラットは器用に壁から壁へ飛び移り磯矢の攻撃をかわす。


「レオ様お気をつけください! このジャイアントラットは狩りをします」


「幕府の手先か?」


「今は違います。ただの害獣でございます!」


「喰らえー!」


 林が水の弾を打出す。

 しかしそれも不気味なほどのスピードでかわされ当らない。

 そうこうしてるうちにジャイアントラットは磯矢を飛び越えた。

 レオを襲うことにしたのだ。

 だがそれがジャイアントラットの最大の失敗だった。


「オラァッ!」


 レオの脳神経は精霊格斗術に最適化されている。

 つまり精霊格斗術に覚醒した今ではその反射神経も常人を越えていた。

 普通、人間では対処出来ないコンマ数秒、その中でレオはウィンデーネの力を解放、襲いかかるジャイアントラットに強化された拳によるフックをお見舞いしていた。

 それもジャイアントラットにも回避できない速度で。


「キイイイイイイイイィッ!」


 悲鳴を上げながらジャイアントラットは壁まで吹き飛ばされる。

 そして轟音と共にダンジョンの壁を突き破った。

 続けて部屋の逆側の壁が粉砕される音がした。

 レオが壁の穴から部屋に入るとジャイアントラットは白目をむいてピクピクと痙攣をしていた。


「なるほど。こんなもんか」


 こうして危険地域でのファーストコンタクトはレオの圧倒的勝利に終わったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。