9話:空想劇-死-
我とはそもそも何なのか・・
太古の昔に、神官としてこの世に政治を執り行い安定をもたらしていた・・とか、かつての英雄の末裔の霊・・とかそんな大それたものではなく、単純にとある村の青年だった。
昔行ったあの島は別名:忌朱島。
かつてはあそこにも立派な村があった。
かつては・・。
150年前に疫病のために滅んだと文献にはあったが、実際には違うようだ・・。
真実は、当時の邪神が雨が降らなかったために神への捧げものとして海の神へと生贄にされたところから疫病が始まる。その疫病はいまだに謎とされていて感染すると身体中の体液が皮膚から抜けて、無くなってしまうというものだ。その流れ出る光景から、豪雨病とされている。
生贄になった結果として雨が降ったのだが、それは”恵みの雨”ではなく”死を呼ぶ雨”となって村は壊滅した。これがかつての・・我の人生であった。
その後我は、肉体と精神の転生を望んだ・・。
肉体の転生は叶ったが、精神の転生は叶わなんだ・・。
転生しようとしたが、その前に村の供養だとかで訪れていた僧侶によって精神は魂として封印されていたノダ。
封印は我の能力で次第に弱まっていたが、肉体がない状態では復活など遂げることなどできぬダロ?
そんな時だ・・貴様らが現れたのは。
我は貴様に始め乗り移ってやる予定だったが・・貴様の心には救済と慈愛が宿っていてな・・それすなわち聖なる光と同様。
だからこそ、貴様には乗り移れなかったのだが・・貴様の隣にいた男には同様な心が宿っていたが、唯一違ったのは自身の力に溺れていたことダ。
あの状況で貴様を守るという行為は自身にとって力強く感じたのであロウ。
力に溺れる、すなわち心には不意に負が走ったのだ・・。
だからこそ、奴の肉体に乗り移りあの島から脱出が叶った。
そして、後に邪魔になるであろう貴様を始末しようとしたのだがな・・あの男・・無意識に我を心の中に封じめたノダ。
だからあの場では手出しはできなかったのだがな・・次第に力に溺れていったあいつを文字通り影で操るのはたやすかった・・。
だが、殺すことはできなかった・・何故かわかるだろう?
”いじめを起こし、近寄りがたい存在にしておけばいい”
そう奴は思ったのだろう。
だが、誤算があった。
転生した我が肉体が貴様の学び舎に届いてしまった・・。
それがこの男・・海神だ。
しかしすぐには移れなかった。
先ほども言ったが、我は封印されていたのでな。
だがそれは貴様のおかげで解けた。
貴様があの時、こやつに反撃したおかげでな。
”俺のやってきたことはなんだったんだろう・・。”
そう思った瞬間に封印が解けた。
そして海神の肉体へ移り、完全な復活を遂げられた。
だからまず貴様を殺しにかかったが・・またあの男に邪魔をされた。
だからあの男には地獄を与えた。
拉致し、洗脳し、服従させて・・我のペットにしてやった。
犬以下の分際に犬と同等の地位を与えてやったノダ。
とここで邪神の回想のような映像が頭から途切れた。
最後の神河の洗脳シーンは忘れられないトラウマになるだろう。
あんな拷問まがいなことをされたなんて・・
それなのに・・それなのに・・私は
「復讐しようとしたなんて馬鹿ダナ。」
海神は・・いや邪神は笑った。嘲笑った
「さて、貴様には消えてもらうとしよう・・。我の計画に支障がでるからナ。」
「計画だと?」
「我の計画は再びあの疫病を流行らせ世界を終わらせるコトダ。まずはこの国を滅ぼすのダ。今度は村なんて規模じゃなく、億単位で滅ぶノダ。だが、貴様の存在はここで終わらせる。全人類の中で貴様だけがあの病気の抗体を持つのだからナ。」
「俺の中に抗体が?・・なら、あの病を治る薬を作れる・・。なぜそんなことが言える?」
「貴様がこの間バーで飲んだものには睡眠薬と病原体を仕込んでおいた。ついでに感染すればあのバーの奴らもついでに殺せるかラナ。だが貴様はかからなかった。このことから抗体を持つと断定できるであロウ。」
「確かに・・その通りだ。じゃあ、ここでやられるわけにはいかないな!」
私は今ある武装すべてを奴に向けてはなった。しかし、先ほどのようにすべて止められてしまった。現代兵器では勝てないのか?
「我を倒すことなどもはや叶わぬ。じゃあな。」
そういった後に黒い槍が私の心臓を貫いた。
突然の事に驚いたがすぐに現実だと実感できた。
痛みが強く強く感じた。
次第に自分の身体が冷たくなっていく感覚に襲われた。
”ああ・・そうか・・私、死ぬんだ・・。”
意識が朦朧としたが一瞬の事だった。
逃げようと這いずったが・・もうだめだ・・。
意識が完全に消えた。
私は死んだのだ。