6話:過去の黙示録-すべてが変わってしまったあの日へ-
昔の事がふわふわ風船みたいに浮いてくる。
シャボン玉だったら割れてその記憶が消えてしまうだろう。
しかしながら風船も風に飛ばされればどこかへ行ってしまう。
だけど風船はまたふくらませばいい。同じものは無くても、同じ色の風船ならいくつもあるのだから・・。
きっと、私はこういう風に記憶をうまい具合に改ざんしていたのかもしれない。
幼い日・・小学生のころの記憶・・。
小学生の時声が高く、太っていたが・・いじめなどなかった。
小学生のころ、私は神河と親友だった。
あのころはよく、いろんな場所に遊びに行ったっけ。
川、森、廃墟など色々。
ああ・・あの頃は楽しかった。1番かも知れないな・・。
一緒に笑って、一緒に泣いて・・
そういえば、大きな冒険をしたものだ。
最後に冒険したのは、海の孤島の廃墟。
何かの祀りを行うような不思議な場所だった。
「怖いけど、行ってみる?」
幼い神河は言った。
「うん!怖いけど、2人なら行けるよ!」
これが当時の私だ。
可愛げがあるだろ。今の私とは大違いだ。復讐に取りつかれた私・・哀れだと思うよ。
私と神河は未知なるダンジョンを進む。
ギャーギャー言いながらも、二人は仲良く進む。
一番奥だろうか?たどり着いた。ダンジョンで言うボスがいる場所、イベントの起こる場所。
本当に現実に起こる事などないだろう・・が・・起きてしまっていたようだ。
黒い光が輝く。人魂のようなその姿。私は恐怖で足がすくんでしまったが、神河くんは堂々としていた。すると、人魂から声が
”我呼ビ覚マサレシ刻来タレリ・・”
「誰だ!」
と神河くんは言った。
”汝我ニ名ヲ問ウトワ愚カシヤ・・”
”我ノ名ハ、邪神。太古ノ昔カラ存在スル理ナリ”
「神様ってことか?なんでそんなのがここに・・。」
”我、新タナ器ヲ欲スル。貴様ノ肉体ヲ我ニササゲヨ”
「嫌だね。なんでてめえに身体を渡さなきゃならないんだよ。帰ろうぜ、陸守。」
「足がすくんじゃって動けないよ。」
「仕方ねえな。」と肩を貸してくれようとしてくれたその時、邪神は隙のできた神河の肉体へと入って行った。苦しみ始めた、神河。
「ぐっく・・陸守・・逃げ・・ロ・・。」
「嫌だよ・・。神河を置いては行けないよ。」
「早く・・逃ゲ・・」
どんと突き飛ばされた。壁に投げ出された。
「ふふふ・・・ハハハハあ・・。我世に再ビ転生叶フ。ははははは。」
そこにいたのは神河であって神河じゃないものであった。
「貴様には我がよみがえったことを口外スルやもしれぬ、ならばヌシの記憶ヲ奪うノが鉄則でアろフな。」
奴が手を掲げた次の瞬間私は意識を失った。
起きるとそこは浜で、神河くんがいた。
「大丈夫か?お前海でおぼれたんだぞ?」
「え?島は?」
「島?ああ、あそこか・・。あそこは立ち入り禁止だからいけねえべや。ほら、行くぞ。」
「うん・・。」
この時に邪神は神河に乗り移っていたんだろう。
次の日に、海神は転校してきた。それからだ・・。
私のいじめが始まったのは・・。
邪神のせいなのか?
もしかすると、邪神が全ての元凶なのではないだろうか・・
ここで目が覚めた。すべて思い出した。
失われていた記憶・・神河は私をかばって豹変した。
私はそれを忘れていたのに、神河に復讐するためにと思って生きてきた。
海神の言った通り、私は馬鹿だ・・。
命の恩人を殺そうと計画したなんて・・。
今神河は海神の家に監禁されている・・。ならば、恩返しと思って助けるのが筋だろう。
そう決意し、テレビをつけると緊急速報が行われていた。
爆破事件についてのようだが、犯人は・・とみる間もなくパトカーの音が鳴り響き、拡声器から声が聞こえた。
「テロリスト陸守、無駄な抵抗をやめ投降しなさい」
寝起き早々悪い冗談だ・・。
海神の仕業だな・・
これから始まるであろう逃走劇のスタート合図は、今から2秒後に部屋に入ってきた閃光弾だった。