5話:復讐劇-神河(かみかわ)の終わり-
花岡源重郎・・おそらく私、陸守は彼の事を忘れてはならないだろう・・。
こんなことになってしまった以上、忘れることは許されない。
私はこんな結果になってしまったことが本当に申し訳なくて、仕方がない。
”昨日のうちにけりをつけておけば・・”
少なくとも、花岡は死なずにすんっだろう。
全く持って、甘い考えを持ってしまったものだ。
永遠に後悔したくないので、私は早々に行動に移ることにした。
花岡のため・・とは言いつつ、自分のためなんだろうな・・。
過去との決別・・そうしなければ自分の道は歩めないだろう。
神河・・この男は昔私がプッツン行った時の被害者だということはなんとなく予想がついたと思う。
しかしながら、この男にはこれだけでは生易しすぎたようだ。
もっときつい事をしてやらねば分からないようだ・・。
さあ、反撃開始だ。
神河という男は、単純に言えば頭がすごく柔らかい男であるといえる。柔軟な考えの持ち主・・アインシュタインのような頭脳にヒトラーのような指導力があるといえば分かるだろうか。
この男の危険性と言うものが・・。歴史上決して合わさってはいけないだろう組み合わせだ。
また、情報によるとゲーム会社の前は、アメリカの方で軍の特殊訓練を受けたようでかつてはFBIだったらしい。
こんな、ばかげた設定の奴なんかに勝てるのだろうか?
少なくとも、考えなしに行けばやられるだろう。
全く・・厄介なことばかりしやがって・・
アインシュタインの頭脳とは言ったものの、博士のような知識はなく単純な柔軟性が博士と同レベルと言える。
つまりは、状況変化に対応しやすいということである。
全く、困ったものだ。
もう、そうなったら神河を殺すしか方法がないじゃないか・・
今夜決行しよう。
”神河を殺す”計画を・・。
時刻は21時になった。
計画は実行に移すことになった。
十分に装備を揃えた。
私はホテルをチェックアウトをして、神河の現在いる場所である奴の会社に向かった。
タクシーでは向かわず、私は徒歩で向かった。
タクシーだと、私が行った証拠が残ってしまうため街中にある監視カメラを避けつつ、ゲーム会社に向かった。
30分ほど経ったあたりに会社に着いた。
会社はいまどきの高層ビルと言う感じだった。どうやらこのビル全体が神河の会社のようだ。ならば、計画は予定通りに行えるだろう。
一番上のフロアだけ明かりがついている。
おそらくあそこに神河がいるのだろう。
なめやがって・・。
取りあえず、トイレに行こうかな・・。計画通りに・・。
ロビーには警備の人がいたが、余裕で通れた。だって、清掃係の格好にさっきトイレで着替えたから。ついでに、このビル全体に妨害電波を送っているため、今日の監視カメラの映像は記録されない状態だ。妨害電波の媒体は、先ほどのトイレにあったモップの中に隠してある。
5時間過ぎると自爆する設定にしておいたから、もしもの時や回収し忘れた時などでも大丈夫だ。
さて、エレベーターに乗って、いざゆかん!神河の元へ。
エレベーター内で、私は清掃員の格好から、スパイが敵地に潜入する際の黒い服装に着替えた。仕込みやもろもろを済ませた頃に、最上階の社長室のフロアに着いた。さあ、決戦だ。
神河との最終決戦だ、とはりきっていたが・・
扉があいた前には、神河が立っていた。
え?・・・
「やあ、待ってたぞ。陸守。来ると思っていたよ。久々だね。元気にしていたのかな?」
飄々とした物言いで、神河は話しかけてきた。そのままニッコリ笑ってこっちに近づいてきた。私は恐怖がフラッシュバックしたため、
「来るな!!」
と大きく、喉が枯れるかという勢いで叫んだ。
不快に思ったらしく、神河は
「あっそ。」
といい、奥の社長室に入って行った。
心臓が押しつぶされるような感覚に落ちいた。一種のパニック状態と言える。呼吸も少し乱れたが、平常心を取り戻そうと目をつぶり深呼吸をした。
平常心は取り戻せただろう・・ゆっくりではあるが、社長室へと私は足を運んだ。
中に入ると、神河はコーヒーを飲んでいた。優雅にクラシックを聴きながら・・
何をやっているんだこの男は・・。
私がこんなにもつらいのに・・。
「やあ。おそかったね。緊張してげろっちゃった?顔色悪いよ。」
笑えないんだよな・・こいつのジョークのような天然が。
「いや、吐いてはいないよ。ただ、気分が悪くなってね。」
「俺の顔見たから傷口でもうずいた?」
あいも変わらず、笑顔が止まない。この笑顔を崩せるだろうか?
「なんで、私がここに来たのか分かってるんだろ?」
怒りの口調だった。怒声だろう。怒ってばかりだな・・。
「うーん・・俺に対してなんかしてほしいんでしょ?例えば、復讐するからとか?」
笑顔が崩れない。じゃあそろそろ崩そう。
「お前を殺す。昨日の花岡のためにもな・・。」
「花岡?ああ、花ちゃんね。あいつを殺したのが俺だと思っているわけ?まあ、あってるよ。でも、それだけで復讐なんて考えないだろ?昔いじめたのがそんなに気に病むなんて気の小さい男だな。」
何かキレる音がした。そのあとのことはよく覚えてない・・。
真っ白だった・・。何もかも。
気づくと、手に拳銃と足元には5発の弾丸の残骸と、神河の死体がいた。
血が出ていた。頭と胸から。床が血まみれになっていくのが分かった。
あいつの身体に触れると体温が奪われて、氷のように冷たくなっていくのが分かった。
ざまあみやがれ・・とは思わなかった。なんか虚しい気分だった。
せめてもと思い、近くのカーテンで死体に布をかぶせようとしたとき異変に気付いた。
ピッピッピとドラマでよく聞く音が鳴っていた。
もしや・・と思い、布を急いでかけて部屋を探してみると予想を裏切らない結果が起きた。
爆弾があった。おそらく、プラスチック爆弾だろう。
量的に考えて、このフロア全てが吹き飛ぶだろう・・。
急いで逃げようとしたときに、社長室の扉が自動ロックされた。
残り時間10分。
解除は外からしかできない仕組みになっている。
万事休すか・・。
爆弾の内臓されているスピーカーから、声がした。
この声は・・海神!
「おーい。陸守。そろそろ、神河殺したかな?残念。そいつは影武者だよーん。本物は今も僕の家でずっと監禁してるよーん。卒業式だから、10年間くらいかな。」
爆発まで残り8分。
「なんかね、中2の時のあの件の終わりに、僕に向かってさ陸守くんにあそこまでのいじめはやることないだろって。馬鹿だよね。黙って僕に従っておけばよかったものを・・。僕に反抗する人間なんか腹立つから排除するのがいつも通りなんだけどね。まあ学生当時だったから殺すに殺せなかったんだよね。卒業式の日に拉致ってさ、今は洗脳してあるからいいペットだよ。まあ、あいつの親は両方とも海外だったから連絡とかもごまかしとかもきいてよかったよ。」
爆発まで残り5分。
「うーん、だからこそ今から君を排除するんだけどね。君僕の事嗅ぎまわりすぎ。馬鹿じゃないの?ストーカーっていうんだよ。変態野郎め。そういうのが社会的に抹殺されるのは政治家として気分がいいね。まじ快感もの。」
爆発まで残り4分。
「もし君が僕に会いたいのなら、直接来るんだね。まあ、次に会うのはたぶん天国かな。まあ、君が行くのは地獄だろうけどね。ああ後、花岡殺したの僕だから。仇を殺せなくて残念だろうけど、まあ悔みながら、文字通り絶望しながら死んでくれたまえ。じゃあね。君は一生負け犬君なのさ。だから、最期くらい綺麗に散ってくれたまえ。」
爆発まで残り2分。
ここで、音声は終った。海神の声は止まったのだ。
あーあ、うざいな。昔から。
さて、脱出するか・・。
そう思い、窓ガラスを割った。
「私が何の準備もしないでここに来ると思ってんのか?」
そういいながら、一丁の拳銃を取り出した。
そして、向かいのビルに向かって私はその拳銃でワイヤーを飛ばした。
バイオハザードシリーズでおなじみのフックショット・・とは言えないがまあ、それに近いものだ。
拳銃を社長の机に固定して、私はワイヤーをつたって向かいのビルへ飛び移る。
ビルに着いたあたりで時間が残り1分となっただろうか。そのまま、急いで走り去ったが・・今私が移ったビルが爆発した。
爆風によって私は電柱に思いっきりぶつかった。幸いなことに頭は守ったので何とか動けた。
本当に嫌な奴だ・・。逃げるのを見越してかよ・・。と思ったら、神河(偽)のいたビルも爆発した。ぬかりねえな・・。
こうして私は夜の闇へと消えてった。
まあ、単純に次の潜伏先に向かっただけだったんだけどね。
潜伏先に着いたら、私はすぐ眠りについた。
そして、夢をみた。
昔の・・まだ神河と仲が良かったころの幼い記憶。
そして、神河が変わってしまった瞬間の記憶を・・。
次回は過去を描きますね。