幸運
ソルにとって人々とは、ただの味方であって仲間ではなかった。なぜなら味方には、言葉や心の感謝で良かったが仲間は目で見える、体で物理的に感じるものでしか感謝を表せないと思うからだ。
人々は、家族や自身がソルと結婚することを望んだ。何故ならソルは市民一の富豪だったからだ。
ジェノサイドがあってから、数え切れないほどの富豪達はどんどん破産して行った。戦いに勝つために国が使った金を元の量に保つため、国は当時最も金を持つ家から金を巻き上げ破産させた。その次は2番目に金を持つ…そうやって沢山の金持ちと金は国のために消えて行った。その出来事は裕福潰しと言われた。そんななか当時ソルの家は富豪の仲間入りギリギリのところに居たため、ソルの家に国がくる時既に国には充分な金が集まっていた。更に"元"富豪達がデモを起こしたことにより、ソルの上を行くもの達はソルよりもしたに落ちて行きソルが一番になれたのだった。
人々と結婚することは、金を共有すること。そんなことソルは考えたくも無かった。化けの皮しか着こなせない女何かとくっ付きたくは無かった。そう、どちらかと言うとソルは人々をこばかにしていた。だからこそ両親を兵に呼んだ元貧困層の軍師を憎んでいた。ただ、親が戦争で死んだだけなら怒ったりしないのだ。それは親の弱さなのだから。しかし、それを誰がしたかで怒りは変わる。
ソルは、変わった人であった。
持ち物は服さえあれば良いと思ったが、軍師にあった時にあった方が精神を追い詰められると思い、母の愛用包丁と父の形見の石を持った。父が何時も肌に離さず持っていたこの石は変わった色をしていた。石にしては透明で中には何か二つの球体が入っており、まるで小さなスノードームでとても美しかった。父が軍服を着て、この石を俺に握らせたのは記憶に新しい。その時の父の死を覚悟した様子と、何か申し訳ないとでも言うような後悔のあるような眼を俺は今でも夢に見て朝飛び起きることがある。でも、その夢があるからこそ俺は思考を一つにできるのだった。軍師を殺すと言う一つの目標に。
そんなことを胸に俺は街へと繰り出すのだった。軍師はジェノサイドの後霧のように姿を消した。元々人の目につかなかった奴は、戦後の喜びで皆がパーティをしている間に何処かへ行ってしまった。が、人々の噂では生存説が随分と濃いようなので噂を頼りに奴を探すしかない。噂を餌とする人々の話は説得力があった。