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序章

「はぁ~・・・・・・こんなにいるのかよ・・・・・・」

 憂鬱そうにため息を吐きながら少年はつぶやく。

 少年を取り囲む敵の数はおよそ1000。ゴブリン、スライムなどのコアなモンスターや、オーク、デビル、ワイヴァーンなんかもいる。

 何より一番ウザったいのは、蠅王ベルゼブブだろう。

 蠅をそのまま巨大化させた見た目のくせに戦闘力は異様に高い。上級魔族の一体である。『七つの大罪』のうちのひとつ、『暴食の罪』の称号を持った魔王だ。そのベルゼブブが999の魔物を連れて襲いかかってきたのである。

「ツイニオイツメタゾ・・・・・・ユウシャメ・・・・・・」

 かすれた声でベルゼブブは少年に諭してきた。二本の手をシャカシャカと動かす動作に蠅の面影があり、より一層不気味さを醸し出していた。

「っは!俺はただの勇者じゃねぇよ!」

 少年はニヤッとして武器を構える。

 持っている武器は――ただの棒切れ。

「俺はなぁ・・・・・・『星屑の零斗れいと』だ!ちゃんと覚えとけよこのハエ野郎!」

 少年は棒切れをぐっと握り、1000の群れに飛び込んだ。

 多勢に無勢もいいところである。1対1000。あまりに一方的な、それこそ無茶な挑戦だった・・・・・・はずだった。

 少年は強すぎた。

 棒切れから繰り出されるひと振りは100の魔物をなぎ払い、小柄な体躯からは考えられない動きで魔物の攻撃を躱す。ちぎっては投げちぎっては投げの繰り返しだった。

 ――このままでは勝てない。

 蠅王ベルゼブブはそう悟ったのだろう。仲間を盾に不気味な羽を大きく広げ、空へ舞い上がる。

「ソンナ、ベルゼブブサマ!オマチヲ、グァァァ!!」

「ワレラヲ!ワレラヲミステナイデクダサ、ギギャァァァ!!」

 ゴブリンと蛙のような相貌をした悪魔の断末魔は蠅王には届かない。

「オイ待てや!ハエ野郎!」

 少年は魔物を一通り切り捨て終えてからベルゼブブの元に飛びかかる。

 少年の跳躍は、もはや跳躍の域を超越していた。

 飛ぶ。

 この表現が最もふさわしいだろう。

「マ、マテ!ユウシャヨ!スコシワレトハナシヲシヨウデハナイカ!」

 ベルゼブブは憐れにも許しを請う。

 しかし、

「話だと?」

 ――少年は魔物の戯言など、聞く耳なんて持っていなかった。

「魔物の話しに耳なんてかさねぇよ!こんのクソハエ野郎が!」

 ズバッ!

 そんな音を立てて少年の棒切れは、蠅王の妖しく輝く羽を切り裂いた。

「グギャァァァァァァァァァァァァ!!」

 醜く声を荒げながら、ベルゼブブは地に向かって急降下を始めた。

 それに伴い少年も、自由落下を始める。

 ストっと着地した少年は、地にひれ伏した蠅王を見下す形で、棒切れを突きつける。

「どうだよハエ野郎、これがテメェら魔物がいままで人類に害を与えてきた罰だ」

 少年は述べた。これは魔物への粛清なのだと。

 しかし蠅王は、

「・・・・・・害・・・・・・ダト?・・・・・・ワレワレガ・・・・・・ニンゲンニ・・・・・・イッタイナニヲシタト・・・・・・イウノダ・・・・・・?」

 蠅王は言葉を綴る。

「ワレワレハ・・・・・・タダ・・・・・・」

「ごちゃごちゃうるせぇよ、汚ねぇ魔物風情が」

 ザクッ。

 そんな音を立てて、棒切れは蠅王を貫通した。

「グァガガガ・・・・・・!!」

「この世界の人たちから聞いたぞ。お前たちはこの世界の人たちを散々殺してきたそうじゃないか」

「シ・・・・・・シラン・・・・・・ワレワレハ・・・・・・ナニモ・・・・・・」

 ――息をしていない。

 蠅王ベルゼブブは死んだ。その事実をこの場の静粛が証明していた。

「・・・・・・後味わりぃな畜生」

 少年は決戦の地、魔界をあとにした。

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