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8話 古道具屋、香霖堂




優翔は突然、紫に買い物の付き添いを頼まれた。


そしてついて行った場所は“香霖堂”…


その店には優翔の知っている物がたくさんあった…



・・・






今日俺は、紫さんに頼まれた。


何を頼まれたかって言うとーー


「買い物の…付き添い?」


「そう。あなたは付いてくるだけで良いのよ」


「それって意味がまるで無いと思うんですが…」


「そう言わないで、付いて来てくれるだけで良いから! ね〜 お願い」


人間、誰でも「お願い」と言われると、断る訳にはいかないーー。


それは相手が願いを込めて言っているからね。


「はぁ…わかりましたよ。行きましょう」


「ウフフ、ありがとう」


正直乗り気じゃないけど、これもまた暇を潰すにはピッタリかもしれない。


俺は早速、何時もの“現代服”に着替えて紫さんに駆け寄った。


しかしーー紫さんは一体何処に向かうつもりなのだろう…


わざわざ俺を連れて行くくらいだから、何かあるのかもしれない。


俺は少しワクワクしながら紫さんに話し掛けた。


「紫さん。一体何処に行くんですか?」


すると紫さんは笑みを浮かべながら言った。


「それはーーお・た・の・し・み」


・・・


気になるが気にしたく無い言い方だ…


俺は少しだけ怖くなった…


そして紫さんは空間を指で裂いた。



そう言えばーー今更だが、この空間って結構気色悪いな…


最初に見た時は何とも思わなかったが、今となると出る言葉は“おぞましい”だ…


紫さんは裂いた空間の中に入り、手招きをした。


「ほら、行くわよ」


「あ…はい」


俺は引き気味に空間に近づいて足を踏み入れた…


とーー


「えっ…わぁッ⁉」


いきなり体が下へ落ち始めた。


俺は咄嗟に体を浮かした。


何が…何が起こった…?


「あぁ、このスキマは足場なんて無いから、ずっと浮いておかないと永遠にスキマ内を落ち続けて彷徨う羽目になるわよ」


それを聞いた俺の体内は急激に冷えた…


危なかったーーって事か…


いや、むしろ危機一髪だったかな?


どちらにせよ、ギリギリだった…


俺が飛ぶ力を持って無かったら今頃…


考えるだけで寒気がする…やめよう…


と、紫さんは空間内を裂いて出た。


そしてまた手招き。


「こっちよ」


何だか紫さんに置いて行かれてる気がするのは気の所為か?


まぁいいや。


俺は裂かれた空間内の穴から外に出た。


そこには…



香霖堂



こう書かれた看板が古臭い家の上に置いてあった。


「こうりんどう?」


俺は勘で看板の漢字を読んでみた。

すると紫さんが そう と、言った。


どうやら読みは合ってたみたいで…


気付くと紫さんが何かをブツブツ言いながら古臭い家のドアを開けて入って行った。


ーーてか、もしかしてここが付き添い目的の場所なのか?


俺は小走りで古臭い家の前にまで立ち、ドアを開けた。


「いらっしゃいませ」


実に優しそうな男の人の声が聞こえてきた。


見ると、メガネを掛けた若い男性が本を読んでいた。


しかも、霊夢や魔理沙も居る。


そして目の前には紫さんが居た。


「紫さん。ここですか? 付き添いの目的地って」


俺はこちらに背を向ける紫さんに訊いた。


訊いたら紫さんは体半分をこちらに向けて答えた。


「ええ そうよ」


でしたか…


ふと気が付くと、若い男性が俺を物珍しい目で見ている。


気味が悪いので俺は男性に話し掛けた。


「あの…何か?」


すると男性はメガネを中指で突いて位置を修正すると、鋭い目付きで俺を見ながら訊いてきた。


「君ーー外来人だね」


そんなの俺の格好を見りゃわかるだろ。


「そうですが…」


俺がそう返したら男性は目を輝かせ始めた。


そしてこちらへ近づいて来て握手してきた。


「そうか君が噂に聞く外来人か! 会いたかったんだよ!」


ーーいきなりどうした?


少し困惑したが、落ち着きを取り戻して男性に訊いた。


「誰なんですかあなたは?」


「すまない、紹介が遅れたね。僕は森近 霖之助(もりちか りんのすけ)だ。君の名前は何て言うんだい?」


「鳴神 優翔です」


森近 霖之助 か…


霖之助の霖が店の名前が付いているけど、特に意味がある気がしないな。


「あら? 霊夢、魔理沙、優翔に挨拶はしないの?」


そう言えば、二人とも一切俺に触れようとしないな。


何でだ?


「何だ、二人とも彼の知り合いかい?」


霖之助さんは霊夢と魔理沙に訊いた。


すると霊夢と魔理沙は僅かに間を置いて口を開いた。


「まぁ…知り合いと言えば知り合いね」


「あ、あぁ…」


二人の言葉に対し、紫さんは何かを言おうとしたが、それを俺が止めた。


「紫さん、大丈夫です。最初の対面がまさかの“アレ”だったら、誰だって何を言ったらいいかわかりませんよ」


俺だって頭の中で呟くだけだしね。


“アレ”とは紫さんと霊夢と魔理沙が俺を倒そうとした時の事だ。


あの時は本当に困った…


そしてどうにもならなかった…


「何も言わなくていいよ。俺も謝るべきだし。だけど! 何も知らないのに疑うのだけはやめてほしい。俺異変なんて初めから起こしてないし。そもそもーー異変て何?」


俺は謝りがてら今まで言いたかった事を全部言い切った。


すると霊夢と魔理沙の表情が少し緩んだ。


これで良かった…のか?


「あ、ところで紫さん。買い物って言ってましたけど、何を買うんですか?」


「そうだった。霖之助さん。アレまだあるかしら?」


「アレかい? まだあるが、君が買い物とは珍しいね」


さっきからアレって言ってるけど、紫さんや霖之助さんが言う“アレ”って何なんだ?


すると、霖之助さんがカウンターに行って手乗りの箱を取り出した。


ーーて あれ? あの箱どっかで見た事ある…


そして霖之助さんが箱を開けた時だった…



⁉ あの箱の中に入っているアレは…!


iPhoneじゃないか!!!


俺は心の中で叫びながら硬直してた。


そして直ぐに我を取り戻し、思いっ切り言葉を言い放った。


「そ…それは、iPhoneじゃないですか!!!」


俺の言葉に驚いた全員の中で、唯一霖之助さんが訊いてきた。


「君、これを知ってるのかい?」


「勿論のオフコース! これはiPhone3と言って、結構前のiPhoneの機種です」


「そのアイフォーンと言うのは何なんだい?」


「携帯電話型タブレットーーて言ってもわからないでしょうから、簡単に言えばタッチケータイですね」


ーーて、これもわからないよな…


霖之助さんは勿論の事、霊夢と魔理沙も意味不明と言う表情を浮かべていた。


だけどただ一人、紫さんは俺の言った事を理解しているみたいだ。


と、紫さんがみんなの意味不明を断ち切るように言葉を言った。


「霖之助さん。とりあえず、それ頂ける?」


その言葉を聞いた霖之助さんは我に帰った。


「あ…はい。~~です」


「じゃあ ちょうどね」


「ありがとうございます」


支払いを済ませた紫さんは空間を裂いて中に入って行った。


しかしーーよく見たらiPhoneだけじゃなく、iPodやPCまで…


DSにPSPにPS2。


様々な物が大量にあるとは…


「優翔。帰るわよ」


おっとーーもう帰る時間ですか。


俺は紫さんが裂いた空間の中に入り、霖之助さんにこう言った。


「霖之助さん。今度また暇だったら買い物しに来ますね。では…」


そして俺は空間内に消えて行った…








続く

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